真性多血症に新技術の治療薬が登場/ファーマエッセンシアジャパン

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/03

 

 真性多血症(PV)の治療薬ロペグインターフェロンアルファ-2b(商品名:ベスレミ)の発売に合わせ、ファーマエッセンシアジャパンは「真性多血症の治療における新たな選択肢」と題して、都内でメディアセミナーを開催した。

 ロペグインターフェロンアルファ-2bは、PVの治療薬(既存治療が効果不十分または不適当な場合に限る)としては初のインターフェロン製剤であり、2023年年3月27日に製造販売承認を取得、5月24日に薬価収載、6月1日より販売を開始している。

 セミナーでは、同社の概要や今後の展開のほか、同社のコアテクノロジーである“部位選択的モノペグ化技術”の概要の説明のほか、専門医によるPVのレクチャーが行われた。

血液疾患への展開が期待される部位選択的モノペグ化技術

 PVは、骨髄増殖性腫瘍の1種で、骨髄の造血幹細胞の異常により、赤血球が過剰に産生される希少な血液疾患。PVの治療では、血栓症を予防することが一番の目標とされている。血栓症の予防は、瀉血や抗血小板療法、細胞減少療法、分子標的治療薬などによりヘマトクリット値をコントロールすることで、長足の進歩を遂げてきた。しかしその一方で、PVの症状のコントロールや疾患進行の阻止などで、依然としてアンメット・メディカル・ニーズは存在し、今回の治療薬がその隙間を埋めるものと期待されている。

 今回のロペグインターフェロンアルファ-2bに使われている、“部位選択的モノペグ化技術”は、タンパク質分子内の特定のアミノ酸を、ポリエチレングリコール(PEG)という高分子化合物によって、選択的に修飾できるようにした革新的な技術で、このペグ化を行ったタンパク質医薬品は体内における分解が抑制され、半減期の延長と長時間にわたる効果の持続につながりうる、薬物動態/薬力学的特性を示すことができるようになる。

 同社代表取締役社長の米津 克也氏は、今後、白血病などの血液疾患治療薬への展開を目指すと期待を寄せている。

頭痛、めまい、倦怠感がPV患者のQOLを下げる

 基調講演として「真性多血症治療の新たな地平」をテーマに桐戸 敬太氏(山梨大学医学部血液・腫瘍内科 教授)が、PVの診療やロペグインターフェロンアルファ-2bへの期待を説明した。

 PVとは、造血幹細胞に生じた異常で骨髄系細胞が過剰増殖する骨髄増殖性腫瘍(MPN)の1種とされている。その症状として、頭痛、めまい、サイトカインに起因する倦怠感、かゆみや微熱が挙げられる。

 患者数は、年間約800人程度(血液学会疾患登録データ)が発症する疾患であることがわかっているが、推定患者数はこの倍の約1,500人と予想されている。発症年齢としては60代が一番多いが、若年でも多くの患者がいる。

 PVの合併症としては、大きく以下の3つがある。
1)短期的には血栓・出血の発生により心筋梗塞や深部静脈血栓などが発生する。その合併率は4~8.5%とされている。
2)長期的には骨髄線維症や白血病への移行がある。5~10年で10%が骨髄線維症に進展し、さらに10年で10~20%が急性白血病に移行する。参考までに生存率は、5年生存率で92.4%、10年生存率で83.8%との報告があり、死亡原因では白血病への移行が一番多い。
3)全身のかゆみ、倦怠感、食欲低下、脇腹の痛み、寝汗などの全身症候とそれに伴う生活の質(QOL)の低下により日常生活に支障を及ぼす。

 そして、現行のPV治療のゴールは血栓・出血の合併を防ぐこととされている。具体的な治療としては、瀉血、アスピリン投与、細胞減少療法などが各病態のステージによって行われ、患者には全身症候を軽減し、QOLを回復し、白血病や骨髄線維症への進行を止める治療が行われている。

 また、同氏は、PV患者が望む治療についてアンケート結果を示し、「疾患の進行を遅らせること」「血栓の予防」「病状の改善」の希望が多いことを挙げた。従来は進行抑制の治療薬は存在せず、患者の治療への思いと現実の治療にギャップがあることをうかがわせた。

 最後に今回発売されたロペグインターフェロンアルファ-2bの可能性について触れ、本治療薬のIII相試験である“PROUD-PV study”の結果を示し、薬剤の使用により悪性の変異細胞が減少していること、国内試験の29例でも同様の結果がみられたことを報告した。また、安全性についても重篤な副作用はなかったことを報告し、レクチャーを終えた。

(ケアネット 稲川 進)