コロナ緊急事態宣言中、急性疾患の院内死亡率は1.7倍に

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/12

 

 新型コロナウイルス感染流行は、医療機関の救急外来受け入れや入院の制限など、他疾患の患者にも大きな影響を与えた。日本国内のこれまでの感染流行時において、その影響はどの程度であったのか。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院の阿部 計大氏らによる研究がJAMA Network Open誌2023年6月22日号に掲載された。

 研究者らは、最初の緊急事態宣言期間(2020年4月7日~5月14日)の前後における「ACSC」(=Ambulatory Care-Sensitive Conditions:プライマリ・ケアの適切な介入により、重症化による入院を予防できる可能性のある疾患群)の患者の転帰を比較した。期間前は2015年1月1日~2019年12月31日、期間後は2020年1月1日~12月31日とし、日本全国242の急性期病院の退院サマリーデータを用いた。データ解析は2022年8月16日~12月7日に行われた。

 主要アウトカムはACSC疾患の入院数、院内死亡数、院内死亡率であった。院内死亡数は病院到着後24時間以内と以降に分けられた。日本ではACSCの定義が確立されていないため、英国国民保健サービスの定義を使用し、全体解析と合わせ、慢性疾患(喘息やうっ血性心不全など)、急性疾患(脱水症や胃腸炎など)、ワクチンで予防可能な疾患(細菌性肺炎など)に分けて解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・期間中に2万8,321例のACSC関連入院があり、男性1万5,318例(54.1%)、年齢中央値76(四分位範囲[IQR]:58~85)歳だった。2万4,261例が期間前、4,060例が期間後だった。
・院内死亡数は2,117例(7.5%)であった。全体の入院件数は減少(発生率比[IRR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.75~0.94)しており、慢性疾患(IRR:0.84、95%CI:0.77~0.92)、ワクチンで予防可能な疾患(IRR:0.58、95%CI:0.44~0.76)で減少した。
・一方、急性疾患では院内死亡数(IRR:1.66、95%CI:1.15~2.39)および24時間以内の院内死亡数(IRR:7.27×106、95%CI:1.83×106~2.89×107)が増加した。急性疾患は院内死亡率も増加し(IRR:1.71、95%CI:1.16~2.54)、24時間以内の院内死亡率も全体(IRR:1.87、95%CI:1.19~2.96)、急性疾患(IRR:2.15×106、95%CI:5.25×105~8.79×106)、ワクチンで予防可能な疾患(IRR:4.64、95%CI:1.28~16.77)で増加した。

 研究者らは「パンデミック中にACSC関連の入院が全体的に減少したことは、日本や他国で行われた先行研究と一致している。医療現場での感染の恐れ、プライマリ・ケアへのアクセスの減少、医療を求める行動の変化などがこの説明となり得る。さらにワクチン接種キャンペーンなどの予防策が、ワクチンで予防可能な疾患による入院減少に寄与した可能性がある。しかし、急性疾患の院内死亡数と院内死亡率の増加は懸念され、入院後24時間以内の死亡リスク増加は適切な医療サービスを利用することが遅れた可能性を示唆している。今後は急性期の患者にとって必要不可欠な医療サービスの継続性と利用しやすさを確保する努力が極めて重要である」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)