英国で行われた住民ベースのコホート研究で、中等症~重症の乾癬女性患者は背景因子をマッチングさせた非乾癬女性と比べて、出生率が低く、流産のリスクが高いことが示された。英国・マンチェスター大学のTeng-Chou Chen氏らが報告した。乾癬女性患者の出生率および出生アウトカムに関する研究は、サンプルサイズが小規模、比較対象が設定されていない、正確な妊娠記録が欠如しているなどの限界が存在していた。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる研究により、流産リスクの上昇との因果関係を明らかにする必要がある」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年6月7日号掲載の報告。
女性の乾癬患者と年齢・生活水準(剥奪指標)をマッチングさせた非乾癬患者を比較した。1998~2019年の期間にUK Clinical Practice Research Datalink GOLDデータベースに登録された887施設の電子健康記録(EHR)を用い、pregnancy register、Hospital Episode Statisticsのデータを結び付けた。一般的に妊娠可能な年齢(15~44歳)の住民は622万3,298例で、乾癬の診断前1年以上のフォローアップデータがあった乾癬患者6万3,681例が対象となった。臨床医により記録された診断コードで乾癬患者を特定し、乾癬患者1例につき5例をマッチングさせた。
出生率は100患者年当たりの妊娠件数として算出。出生アウトカムを特定するために、pregnancy registerあるいはHospital Episode Statisticsに記録されたそれぞれの妊娠アウトカムをスクリーニングした。負の二項モデルを用いて乾癬と出生率の関連を検討し、ロジスティック回帰分析を用いて乾癬と出生アウトカムの関連を検討した。データ解析は2021年に行われた。
主な結果は以下のとおり。
・乾癬患者6万3,681例と背景因子をマッチングさせた非乾癬患者31万8,405例が、解析に組み入れられた(年齢中央値30歳[四分位範囲[IQR]:22~37])。
・追跡期間中央値は4.1年(IQR:1.7~7.9)。同期間における中等症~重症乾癬患者は3,252例(5.1%)で、うち561例が指標日(最新の診断日、15歳時点、1998年1月1日のいずれか)に中等症~重症乾癬であった。
・全試験期間において、乾癬患者の出生率は、非乾癬患者と比較して有意に高率だった(レート比[RR]:1.30、95%信頼区間[CI]:1.27~1.33、p<0.001)。しかし、中等症~重症乾癬患者の出生率は、有意に低率であった(RR:0.75、95%CI:0.69~0.83、p<0.001)。
・乾癬患者の流産のオッズは、非乾癬患者と比較して有意に高かった(オッズ比[OR]:1.06、95%CI:1.03~1.10、p<0.001)。流産の95%超が妊娠第1期(91日未満)に発生した。
・一方、分娩前異常出血、妊娠高血圧腎症、妊娠糖尿病のリスク上昇はみられなかった。
・流産のオッズは25~34歳群と比較して、20歳未満群(OR:2.04、95%CI:1.94~2.15、p<0.001)、20~24歳群(1.35、1.31~1.40、p<0.001)で有意に高かった。死産や早産の統計学的有意差はみられなかったが、これらの結果は、人口統計学的特性、生活様式、社会経済学的状況、併存疾患で補正後も一貫していた。
(ケアネット)