肺機能の低下や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症には炎症が関与する。そこで、抗炎症作用を有するオメガ3脂肪酸が肺機能の低下やCOPDの予防に役立つ可能性が考えられており、オメガ3脂肪酸の血中濃度が高いと肺機能が高いことも報告されている1)。しかし、オメガ3脂肪酸の血中濃度と肺機能の経時変化を調べた報告はなく、因果関係は不明である。そこで、米国・コーネル大学のBonnie K. Patchen氏らは、前向きコホート研究およびメンデルランダム化研究により、オメガ3脂肪酸の血中濃度と肺機能、気流閉塞との関連を検討した。その結果、オメガ3脂肪酸(とくにドコサヘキサエン酸[DHA])の血中濃度が高いと肺機能の維持に良い影響があることが示された。本研究結果は、American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌オンライン版2023年7月20日号で報告された。
オメガ3脂肪酸の血中濃度と肺機能との関連を調べることを目的として、2部構成の研究を実施した。第1部では、米国のコホート研究(National Heart, Lung, and Blood Institute Pooled Cohorts Study)に参加した健康成人1万5,063人(平均年齢56歳、女性55%)を対象として、最長20年間追跡した(平均7年間)。オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸[ALA]、イコサペント酸[EPA]、DHA、ドコサペンタエン酸[DPA])の血中濃度と肺機能(1秒量[FEV1]、努力肺活量[FVC])を測定し、両者の関連を検討した。第2部では、英国のUKバイオバンクに登録された欧州人(50万人以上)の遺伝子データを分析し、オメガ3脂肪酸の間接的または代理指標となる遺伝子と肺機能の関係を検討した。
主な結果は以下のとおり。
・縦断研究において、血漿中のオメガ3脂肪酸濃度が高いと肺機能低下が抑制され、オメガ3脂肪酸の中でもDHAの寄与が最も大きかった。
・総脂肪酸に占めるDHAの割合が1%増加すると、1年当たりのFEV1、FVCの低下はそれぞれ1.4mL(95%信頼区間[CI]:1.1~1.8)、2.0mL(95%CI:1.6~2.4)抑制された。
・総脂肪酸に占めるDHAの割合が1%増加すると、気流閉塞(FEV1/FVC<0.7)の発生率は7%低下した。
・メンデルランダム化研究においても、オメガ3脂肪酸の血中濃度が高いと、FEV1およびFVCが高いことが示された。
(ケアネット 佐藤 亮)