うつ病または抑うつ症状の既往歴のある患者は、炎症性腸疾患(IBD)リスクが高いといわれている。イタリア・Humanitas UniversityのDaniele Piovani氏らは、うつ病または抑うつ症状とその後の新規IBD(クローン病、潰瘍性大腸炎)発症との関連を調査するため、縦断的研究を実施した。その結果、うつ病歴を有する患者は、たとえ診断から数年たっていたとしても、軽度から中程度のIBDリスクが上昇する可能性が示唆された。Inflammatory Bowel Diseases誌オンライン版2023年6月10日号の報告。
うつ病または抑うつ症状とその後の新規IBD発症との関連を調査した研究を、MEDLINE/PubMed、Embase、Scopusよりシステマティックに検索した。検証されて評価尺度によりうつ病または抑うつ症状の確定診断に至った研究も対象に含めた。診断バイアスと逆因果関係に関する懸念を制御し、うつ病または抑うつ症状とアウトカムとの関係を評価するため、報告された最長タイムラグに対応した推定値を算出した。独立した2人の研究者が、データを抽出し、各研究のバイアスリスクを評価した。最大限に調整された相対リスク(RR)推定値は、ランダム効果モデルおよび固定効果モデルを用いて、算出した。
主な結果は以下のとおり。
・5,307件の研究のうち、13件(900万例、コホート研究:8件、ネステッドケースコントロール研究:5件)が適格基準を満たした。
・うつ病は、クローン病(RRランダム:1.17、95%信頼区間[CI]:1.02~1.34、7研究、1万7,676例)および潰瘍性大腸炎(RRランダム:1.21、95%CI:1.10~1.33、6研究、2万8,165例)との有意な関連が確認された。
・プライマリ研究では、関連する交絡因子が考慮された。
・うつ病または抑うつ症状からIBD発症までの期間は、平均すると数年を要した。
・重要な異質性、出版バイアスは見当たらなかった。
・サマリ推定値は、バイアスリスクが低く、結果は多重感度分析で確認した。
・時間経過による関連性の低下については、明確な結論に至らなかった。
・これらの因果関係を明らかにするためには、さらなる疫学やメカニズムの研究が求められる。
(鷹野 敦夫)