現在、乳がん患者の約8割はHER2陰性(IHC 0、1+、もしくはIHC 2+かつISH-)に分類される。これまでの研究ではその約6割がHER2低発現(IHC 1+、もしくはIHC 2+かつISH-)と報告されている。最近、HER2低発現の切除不能/転移乳がんの治療にトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が承認され、HER2低発現とIHC 0の識別が重要になっている。今回、イタリア・European Institute of OncologyのGiuseppe Viale氏らの国際多施設共同後ろ向き研究で、過去にHER2陰性の切除不能/転移乳がんを診断された患者のサンプルを、HER2検査のトレーニングを受けた病理医が再検査したところ、約3分の2がHER2低発現と判定された。ESMO Open誌2023年8月9日号に掲載。
本研究は、2014~17年にHER2陰性の切除不能/転移乳がんと診断された患者のサンプルを使用した。ベンタナ4B5およびその他アッセイを用いたHER2検査のトレーニングを受けた病理医が、IHC染色スライドについて再検査し、HER2低発現の割合、および当初のIHCスコアと再検査によるIHCスコアの一致率を調べた。さらに人口動態、患者特性、治療、臨床アウトカムとの関連を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・HER2陰性の切除不能/転移乳がん789例のサンプルを再検査した結果、HER2低発現例は67.2%であった(HR陽性例では71.1%、HR陰性例では52.8%)。
・当初のHER2ステータスと再検査したHER2ステータスの一致率は81.3%(κ=0.583)で、低発現(87.5%)がIHC 0(69.9%)より高かった。
・当初のIHC 0症例の30%以上が、全体(全アッセイ)およびベンタナ4B5による再検査で低発現であった。
・患者特性、治療、臨床アウトカムに関して、HER2低発現とIHC 0で顕著な差異はなかった。
著者らは「本データは、IHC 0だった患者でのHER2再評価が、治療における患者選択の最適化に役立つ可能性を示唆している」とし、さらに「標準化されたトレーニングにより病理医がHER2低発現を正確に識別できる可能性がある」と考察している。
(ケアネット 金沢 浩子)