HER2低発現が乳がん患者の予後に影響を及ぼすかどうか、ベルギー・Institut Jules BordetのChiara Molinelli氏らがメタ解析で検討したところ、ホルモン受容体の発現にかかわらず、転移乳がんおよび早期乳がんのいずれにおいても、HER2低発現はHER2ゼロと比較して若干の全生存期間(OS)改善との関連がみられた。早期乳がんでは、とくにホルモン受容体陽性で、HER2低発現が低いpCR率と関連していた。ESMO Open誌2023年7月4日号に掲載。
本メタ解析では、HER2低発現乳がんとHER2ゼロ乳がんの生存アウトカムを比較した研究を系統的レビューにより同定し、転移乳がんにおける無増悪生存期間(PFS)・OS、早期乳がんにおける無病生存期間(DFS)・OS・病理学的完全奏効(pCR)について、統合ハザード比(HR)およびオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)をランダム効果モデルで算出した。
主な結果は以下のとおり。
・同定された1,916研究中、179万7,175例を含む42研究が適格であった。
・早期乳がんでは、HER2低発現はHER2ゼロと比較して、DFS(HR:0.86、95%CI:0.79~0.92、p<0.001)、OS(HR:0.90、95%CI:0.85~0.95、p<0.001)の改善と有意に関連していた。
・OSの改善はHER2低発現患者におけるホルモン受容体陽性と陰性の両集団で観察されたが、DFSの改善はホルモン受容体陽性でのみ観察された。
・HER2低発現は、HER2ゼロと比較して、全集団(OR:0.74、95%CI:0.62~0.88、p=0.001)およびホルモン受容体陽性集団(OR:0.77、95%CI:0.65~0.90、p=0.001)のいずれにおいても、pCR率の低下と有意に関連していた。
・転移乳がんでは、ホルモン受容体の有無にかかわらず、HER2低発現乳がんはHER2ゼロ乳がんと比較してOSが良好であった(HR:0.94、95%CI:0.89~0.98、p=0.008)。
・PFSに有意差は認められなかった。
(ケアネット 金沢 浩子)