新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック開始から3年間、非常に多くのCOVID-19関連の論文が世界中で発表された。京都大学大学院医学研究科の船田 哲氏(現:慶應義塾大学)らの研究グループは、被引用数の多いCOVID-19関連論文を発表した国や機関、研究領域などの傾向を調査した。その結果、高被引用論文の件数は2021年末にピークに達した後、2022年末まで減少傾向を示し、発表数の多い国は当初の中国から米国および英国へと推移していることなどが判明した。JAMA Network Open誌2023年9月8日号に掲載。
本研究では、2020年1月~2022年12月の期間で、Clarivate社のEssential Science Indicators(学術論文の引用動向データを提供するデータベース)から、引用頻度の高い論文を、2ヵ月ごと18期間分を抽出した。それらの論文の固有のアクセッション番号に基づいて、論文データベースのWeb of Science Core Collectionを用いて書誌情報を照会し、COVID-19に関する論文を特定した。論文数は分数カウント法に基づいてカウントし、著者の国、所属機関、研究分野などを調査した。
主な結果は以下のとおり。
・Essential Science Indicatorsで2020年1月~2022年12月の7万3,079件の高被引用論文が抽出された。Web of Science Core CollectionでCOVID-19関連論文を特定すると、2ヵ月ごとの各期間で重複を含む高被引用論文は1万5,262件、重複のない論文は4,131件であった。
・発表されたCOVID-19関連の高被引用論文は、2020年1~2月には14件であったが、2021年11~12月に1,292件でピークに達し、その後は減少傾向を示し、2022年11~12月には649件であった。
・2020年1~2月は臨床医学分野の研究が多かったが(14件中9件[64.3%])、2022年3~4月は427件、2022年11~12月は246件と、徐々に減少した。そのほかの分野の研究は時間の経過とともに増加し、とくに一般社会科学、精神医学/心理学、免疫学、分子生物学/遺伝学の分野で増加した。
・2020年7~8月までは中国が2ヵ月当たりの高被引用論文数が最も多かった(中国138.3件、2位の米国103.7件)。
・2020年9~10月以降は米国が中国を抜いて最多となった(2020年9~10月は米国159.9件、中国157.6件)。
・その後、中国の2ヵ月当たりの高被引用論文数は減少した(2020年11~12月は179.7件、2022年9~10月は40.7件)。
・英国は、2020年11~12月に86.5件、2021年5~6月に171.3件で中国を抜き、米国に次いで発表数が多くなった。
・2022年3~4月から2022年11~12月にかけて、米国、英国、中国では2ヵ月当たりの高被引用論文数が大幅に減少した(2022年3~4月vs.2022年11~12月の件数は、米国:366.8件vs.190.6件、英国:243.7件vs.158.3件、中国:107.5件vs.45.5件)。
・2020年5~6月に高被引用論文を発表した上位5機関はすべて中国であった(華中科技大学:14.7件、香港大学:6.8件、武漢大学:4.8件、浙江大学:4.8件、復旦大学:4.5件)。
・2022年11~12月では、上位5機関が米国と英国であった(ハーバード大学:15.0件、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン:11.0件、オックスフォード大学:10.2件、ロンドン大学:9.9件、インペリアル・カレッジ・ロンドン:5.8件)。
(ケアネット 古賀 公子)