スタチン使用と乳がん死亡率との関連が報告されているが、コレステロール値が考慮されている研究はほとんどない。フィンランド・Tays Cancer CentreのMika O Murto氏らは、乳がん死亡率と血清コレステロール値およびスタチン使用との関連を調査するコホート研究を実施し、結果をJAMA Network Open誌2023年11月1日号に報告した。
本研究には、フィンランドで1995年1月1日~2013年12月31日に新たに浸潤性乳がんと診断され、ホルモン受容体についての情報と少なくとも1回のコレステロール測定値が記録されていた女性患者が含まれた。主要評価項目は、乳がん診断日から2015年12月31日までの乳がん死亡率と全死亡率であった。
主な結果は以下のとおり。
・1万3,378例が参加し、年齢中央値は62歳(四分位範囲[IQR]:54~69)。
・乳がん診断後の追跡期間中央値は4.5年(IQR:2.4~9.8)で、その間に患者の16.4%が死亡、7.0%が乳がんによる死亡だった。
・乳がん診断前のスタチン使用は、総コレステロール値で調整後も乳がんによる死亡のリスク因子であった(ハザード比[HR]:1.22、95%信頼区間[CI]:1.02~1.46、p=0.03)。
・乳がん診断後のスタチン使用は、乳がん死亡リスクを低下させた(HR:0.85、95%CI:0.73~1.00、p=0.05)。
・スタチンの使用開始後にコレステロール値が低下した参加者では乳がん死亡リスクが低下したが(HR:0.49、95%CI:0.32~0.75、p=0.001)、コレステロール値が低下しなかった参加者では有意な乳がん死亡リスク低下はみられなかった(HR:0.69、95%CI:0.34~1.40、p=0.30)。
・スタチン使用による乳がん死亡リスクの低下は、エストロゲン受容体陽性の腫瘍を有する参加者でみられた(HR:0.82、95%CI:0.68~0.99、p=0.03)。
・総コレステロール値で調整後、乳がん診断後のスタチン使用者における全死亡リスクは非使用者と比べて低かった(HR:0.80、95%CI:0.72~0.88、p<0.001)。
著者らは、本研究により乳がん診断後のスタチン使用は乳がん死亡リスクの低下と関連し、乳がん死亡リスクは血清コレステロール値の変化と関連していることが示されたとし、スタチンによるコレステロール低下介入が乳がん患者にとって有益である可能性が示唆されたとしている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)