尋常性ざ瘡へのisotretinoin、自殺・精神疾患リスクと関連せず

提供元:ケアネット

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公開日:2023/12/21

 

 isotretinoinは、海外では重症の尋常性ざ瘡(にきび)に対して用いられており、本邦では未承認であるが自由診療での処方やインターネット販売で入手が可能である。isotretinoinは、尋常性ざ瘡に対する有効性が示されている一方、自殺やうつ病などさまざまな精神疾患との関連が報告されている。しかし、isotretinoinと精神疾患の関連について、文献によって相反する結果が報告されており、議論の的となっている。そこで、シンガポール国立大学のNicole Kye Wen Tan氏らは、両者の関連を明らかにすることを目的として、システマティック・レビューおよびメタ解析を実施した。その結果、住民レベルではisotretinoin使用と自殺などとの関連はみられず、治療2~4年時点の自殺企図のリスクを低下させる可能性が示された。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年11月29日号掲載の報告。

 2023年1月24日までにPubMed、Embase、Web of Science、Scopusに登録された文献を検索し、isotretinoin使用者における自殺および精神疾患の絶対リスク、相対リスク、リスク因子を報告している無作為化試験および観察研究に関する文献を抽出した。関連データを逆分散加重メタ解析法により統合し、バイアスリスクはNewcastle-Ottawa Scaleを用いて評価した。メタ回帰分析を行い、不均一性はI2統計量で評価した。

 主要アウトカムは、isotretinoin使用者における自殺および精神疾患の絶対リスク(%)、相対リスク(リスク比[RR])、リスク因子であった。

 主な結果は以下のとおり。

・システマティック・レビューにより、合計25研究(162万5,891例)が特定され、そのうち24研究がメタ解析に含まれた。
・全25件が観察研究で、内訳は前向きコホート研究10件、後ろ向きコホート研究13件、ケースクロスオーバー研究1件、ケースコントロール研究1件であった。各研究の対象患者の平均年齢の範囲は16~38歳、男性の割合は0~100%であった。
・1年絶対リスクは、自殺既遂0.07%(95%信頼区間[CI]:0.02~0.31、I2=91%、対象:7研究8コホートの78万6,498例)、自殺企図0.14%(同:0.04~0.49、I2=99%、7研究88万5,925例)、自殺念慮0.47%(同:0.07~3.12、I2=100%、5研究52万773例)、自傷行為0.35%(同:0.29~0.42、I2=0%、2研究3万2,805例)であったのに対し、うつ病は3.83%(同:2.45~5.93、I2=77%、11研究8万485例)であった。
・isotretinoin使用者は、非使用者と比べて自殺企図のリスクが、治療2年時点(RR:0.92、95%CI:0.84~1.00、I2=0%)、3年時点(同:0.86、0.77~0.95、I2=0%)、4年時点(同:0.85、0.72~1.00、I2=23%)のいずれにおいても低い傾向がみられた(いずれも対象は2研究44万9,570例)。
・isotretinoin使用と全精神疾患との関連はみられなかった(RR:1.08、95%CI:0.99~1.19、I2=0%、対象:4研究5万9,247例)。
・試験レベルのメタ回帰分析において、高齢であるほどうつ病の1年絶対リスクが低い傾向にあった。一方、男性は自殺既遂の1年絶対リスクが高い傾向にあった。

 著者は、「今回の所見は心強いものだが、引き続き臨床医は統合的な精神皮膚科ケア(holistic psychodermatologic care)を実践し、isotretinoin治療中に精神的ストレスの徴候がみられないか観察する必要がある」とまとめている。

(ケアネット)