心房細動に対するカテーテルアブレーション後に抗凝固薬を継続することの有効性および安全性を評価する臨床試験は実施されておらず、抗凝固薬の継続の意義は明らかになっていない。そこで、金岡 幸嗣朗氏(奈良県立医科大学/国立循環器病研究センター)らの研究グループは、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて、抗凝固薬の継続の有無別に血栓塞栓症と大出血のリスクを検討した。その結果、抗凝固薬の継続はCHADS2スコア2点未満の患者では大出血のリスクを上昇させ、CHADS2スコア3点以上の患者では血栓塞栓症リスクを低下させることが示された。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2023年12月20日号で報告された。
本研究は、2014年4月~2021年3月に心房細動に対するカテーテルアブレーションが行われた患者のデータをNDBから抽出し、後ろ向きに解析した。心房細動の再発がない患者23万1,374例を対象として、カテーテルアブレーション後6ヵ月時点の抗凝固薬の継続の有無で2群に分類した。さらにCHADS2スコアで3群(1点以下、2点、3点以上)に分類し、抗凝固薬の継続の有無と血栓塞栓症、大出血の発生の関連を検討した。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者23万1,374例のCHADS2スコアは1点以下69.7%、2点21.6%、3点以上8.7%であった。また、対象患者の71%がカテーテルアブレーション後6ヵ月時点で抗凝固薬を継続していた。
・血栓塞栓症は2,451例(100人年当たり0.55)、大出血は2,367例(100人年当たり0.53)に発生した。
・CHADS2スコア別に血栓塞栓症リスクを検討した結果、CHADS2スコア3点以上の患者では抗凝固薬の継続により有意にリスクが低下したが、CHADS2スコア1点以下、2点の患者では低下しなかった。CHADS2スコア別の調整ハザード比(aHR)および95%信頼区間(CI)は以下のとおり。
-CHADS2スコア1点以下:0.86、0.74~1.24
-CHADS2スコア2点:0.98、0.78~1.24
-CHADS2スコア3点以上:0.61、0.46~0.82
・CHADS2スコア別に大出血リスクを検討した結果、CHADS2スコア1点以下、2点の患者では抗凝固薬の継続により有意にリスクが上昇したが、CHADS2スコア3点以上の患者では上昇しなかった。CHADS2スコア別のaHRおよび95%CIは以下のとおり。
-CHADS2スコア1点以下:1.51、1.27~1.80
-CHADS2スコア2点:1.35、1.05~1.72
-CHADS2スコア3点以上:1.05、0.71~1.56
著者らは、本研究結果について「心房細動に対するカテーテルアブレーション後に抗凝固薬を継続することのベネフィットおよびリスクは、CHADS2スコアによって異なることが示唆された。血栓塞栓症リスクの低い患者では、抗凝固薬の継続による大出血のリスクが血栓塞栓症予防のベネフィットを上回ると考えられた」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)