境界性パーソナリティ障害の診断~治療に関する包括的レビュー

提供元:ケアネット

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公開日:2024/01/16

 

 インド・Jawaharlal Nehru Medical CollegeのSanskar Mishra氏らは、境界性パーソナリティ障害(BPD)の診断から治療までの複雑さを明らかにするため、包括的な文献レビューを実施した。Cureus誌2023年11月23日号の報告。

 主な結果は以下のとおり。

・BPDは、予測不能な感情、行動、人間関係を特徴とする重度の精神疾患である。
・BPDの診断基準では、情緒不安定、相動性、社会的つながりの希薄などの症状が基本となる。
・注目すべき点は、BPDといくつかの精神症状との間に臨床的共通点がみられ、BPDと精神症状により精神病理学的リスクを増加させると考えられる。
・神経画像に関するエビデンスでは、BPD患者は、とくに脳の感情や衝動性を制御する領域において、構造的および機能的変化が認められる。
・精神分析家Adolf Stern氏は、1938年、治療中に症状が増悪し、自虐的な傾向を示した患者を表現するため「境界性(borderline」」という言葉を用いた。
・現在のBPDに関する研究では、退屈(空虚感に関連する以前の診断基準)などの症状の複雑さが示唆されている。
・BPDの実用的な構成要素に関しては、不明な点があるものの、有望な治療法としてBPDに対する統合的な認知行動療法であるスキーマ療法が注目されている。
・BPDが他の疾患と複雑に関係していることは非常に興味深く、たとえば、一部の神経化学的経路は神経性過食症と一致しており、より密接な相互関係が示唆されている。
・診断に関しては、BPDの特徴的な症状として、見捨てられることへの恐怖、アイデンティティの崩壊、反復的な自殺行為などが挙げられる。
・治療選択肢は、薬理学的介入、弁証法的行動療法(DBT)などの心理学的療法が含まれる。
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬による治療が行われることも少なくないが、その有効性に関する研究は現在進行中であり、綿密な治療計画の重要性が指摘されている。
・BPDは、とくに思春期に発症することが多いことを考慮すると、これまでどおり早期発見が必要とされる疾患である。
・多くの患者において、症状の軽減が報告されているが、依然として課題は残っており、包括的かつ個別化された治療戦略が求められる。

(鷹野 敦夫)