せん妄マネジメントに対する抗精神病薬のQT延長リスク

提供元:ケアネット

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公開日:2024/02/01

 

 集中治療室でせん妄に関連した重度の興奮や知覚障害を認める患者では、抗精神病薬による短期治療が有用である可能性がある。しかし、一部の抗精神病薬は、QTc間隔を延長する可能性があり、致死的な心室性不整脈のリスク増加が懸念される。米国・マサチューセッツ総合病院のMonika Sadlonova氏らは、抗精神病薬とQTc延長に関するエビデンスをレビューし、QTc間隔のモニタリングにより不整脈リスクを軽減するための実践的な方法について検討を行った。Journal of Intensive Care Medicine誌オンライン版2023年12月21日号の報告。

 2023年2月までに公表された抗精神病薬とQTc延長、または不整脈との関連を調査した研究をPubMed、Cochrane Libraryより検索した。

 主な結果は以下のとおり。

・せん妄のマネジメントに一般的に用いられるほとんどの抗精神病薬(ハロペリドール静脈内投与、オランザピン、クエチアピンなど)は、中程度のQTc延長を引き起こす可能性が示唆された。
・他の抗精神病薬のうち、QTc延長リスクの最も高い薬剤はiloperidone、ziprasidoneであり、リスクが最も低い薬剤はアリピプラゾール、ルラシドンであると考えられる。
・遺伝的脆弱性、女性、高齢、心血管疾患の既往、電解質異常、非精神科薬は、QTc延長リスクを高める可能性がある。
・QTc延長リスクのある患者では、QTc間隔を正確かつ継続して測定し、必要に応じて薬物療法の調整を検討する必要がある。
・抗精神病薬は、QTc延長に対する多くのリスク因子の1つである。
・せん妄に関連する興奮をマネジメントする際、個々の患者のQTc延長リスクを評価し、リスクを鑑みた投薬およびモニタリング戦略を選択する必要がある。
・集中治療の環境下では、線形回帰式を用いて心拍数を補正する定期的なECGモニタリングが推奨される。
・重大なQTc延長(QTc 500msec超)が認められる場合には、薬理学的治療の変更も考慮すべきであると考えられるが、治療中止リスク(極度の興奮、侵襲的なモニタリング機器の取り外し)が不整脈リスクを上回る場合には、特定の薬剤の使用を検討することも重要である。

(鷹野 敦夫)