肺がんコンパクトパネル、細胞診検体の精度は?

提供元:ケアネット

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公開日:2024/02/14

 

 2023年1月26日に遺伝子パネル検査「肺がん コンパクトパネルDxマルチコンパニオン診断システム」(肺がんコンパクトパネル)の一部変更申請が承認された。従来、4遺伝子(EGFRALKROS1MET)のマルチコンパニオン診断検査として用いられていたが、今回の承認により3遺伝子(BRAFKRASRET)が追加され、7遺伝子が対象となった。その肺がんコンパクトパネルについて、細胞診検体(液体検体)を用いた遺伝子検査の精度を検討した結果が、國政 啓氏(大阪国際がんセンター 呼吸器内科)らによって、Lung Cancer誌オンライン版2月3日号で報告された。本研究において、気管支生検鉗子洗浄液の検体では、組織検体で検出された遺伝子変異との一致率が94.9%と高率であった。

 本研究は、StageIVの非小細胞肺がん患者を対象とした。液体検体として、気管支生検鉗子洗浄液(鉗子洗浄コホート:79例)、胸水(胸水コホート:8例)、髄液(髄液コホート:9例)を用いて、肺がんコンパクトパネルによる遺伝子検査を実施した。組織検体についても遺伝子検査を実施し(オンコマイン Dx Target Test マルチ CDxシステムまたはAmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネルを使用)、鉗子洗浄コホートの液体検体の結果と比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・鉗子洗浄コホートでは、組織検体で検出された変異との一致率は94.9%(75/79例)であった。
・鉗子洗浄コホートの組織検体と液体検体でみられた相違は以下のとおり(下線部は相違点)。
症例1:組織(EGFR L861Q、MET exon14スキッピング)、液体(EGFR L861Q)
症例2:組織(KRAS Q61H)、液体(検出なし)
症例3:組織(EGFR L858R)、液体(EGFR L858R、KRAS G12C
症例4:組織(EGFR L858R)、液体(EGFR L858R、EGFR A859D
・胸水コホートでは、GM管で8週間冷蔵保存した後でもDNA・RNAの質や量は低下しなかった。
・髄液コホートでは、9例中8例で組織検体にドライバー遺伝子変異が認められた。髄液中に腫瘍細胞が認められた患者全例で、髄液検体で認められた変異と組織検体で認められた変異が一致していた。

 本研究結果について、著者らは「組織検体の採取が困難な場合、治療につながるドライバー遺伝子変異の検索や治療抵抗性の解析に、細胞診検体を用いた肺がんコンパクトパネルによる遺伝子検査が利用可能と考えられる」とまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)