統合失調症患者の皮質領域におけるミエリン形成不全は、これまでの死後脳研究により明らかとなっており、異常な脳の成熟過程を反映している可能性がある。しかし、この異常なミエリン形成が統合失調症の初期段階からすでに存在しているのか、疾患の経過中に進行するのか、両方であるのかは現時点でよくわかっていない。富山大学の小林 春子氏らは、初発統合失調症患者の皮質内ミエリン形成の潜在的マーカーとして灰白質/白質コントラスト(GWC)を調査し、GWCの所見と臨床および認知機能との関連について検討を行った。Cerebral Cortex誌2024年1月31日号の報告。
初発統合失調症患者63例および健康対照者77例を対象に、GWCの調査を目的としたMRI研究を実施した。初発統合失調症患者におけるGWCの所見と臨床/認知的変数との関連も調査した。
主な結果は以下のとおり。
・初発統合失調症患者の両側側頭、頭頂、後頭、島部のGWCは、対照群と比較し有意に高かった。
・これらは、罹病期間、投薬期間、発症年齢、実行機能低下、言語学習機能低下と部分的に関連が認められた。
著者は、「高GWCは皮質のより深い層でのミエリン低下と関連している。統合失調症患者では初回精神病エピソードの時点で皮質のミエリンが低値であり、これが疾患初期段階の認知機能低下のベースとなっている可能性がある」とまとめている。
(鷹野 敦夫)