バイノーラルビートとは、人間の耳では聞くことのできない脳に効果のある低い周波数を、特別な方法で聞こえるようにしたものであり、脳波をコントロールし、集中力や睡眠に影響を及ぼすことが期待される。高齢者の睡眠の質改善に対するバイノーラルビートの影響を明らかにするため、台湾・Shu Zen Junior College of Medicine and ManagementのPin-Hsuan Lin氏らは、単盲検ランダム化対照試験を実施した。Geriatrics & Gerontology International誌2024年3月号の報告。
対象は、台湾の長期介護施設に入居している睡眠の質の低下が認められる高齢者64例。対象患者は、14日間のバイノーラルビートミュージック(BBM)介入を行ったBBM群と対照群にランダムに割り付けた。介入期間中、BBM群は、週3回、朝と午後に20分間、BBMを組み込んだTaiwanese Hokkien oldiesをリスニングした。対照群は、BBMを組み込んでいないTaiwanese Hokkien oldiesをリスニングした。アンケートや心拍変動分析により、対象者の睡眠の質、心拍変動、抑うつ症状を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・介入後、BBM群では、心拍数と正常な洞拍動の心拍数変動平均値の増加、低周波正規化単位と抑うつ症状の重症度の減少とともに、睡眠の質の有意な改善が認められた。
・対照群では、睡眠の質に対する影響に一貫性がなかったが、心拍変動の一部の自律神経調節における有意な改善、抑うつ症状重症度の有意な減少が認められた。
・BBM群は、対照群と比較し、睡眠の質の有意な向上が認められ、交感神経活動の有意な低下が認められた。
著者らは「睡眠の質が低下している長期介護施設入所の高齢者に対し、非侵襲的なBBM介入を14日間実施することで、睡眠の質や抑うつ症状を改善できる可能性が示唆された」とまとめている。
(鷹野 敦夫)