睡眠障害と認知症との関係は、依然としてよくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のYing Xiong氏らは、高齢者(65歳以上)における睡眠対策と認知症との関係を調査し、これらの因果関係を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、若年高齢者の短時間睡眠者、高齢者および頻繁にアルコールを摂取する長時間睡眠者において、認知症リスクとの関連が示唆された。Psychiatry Research誌2024年3月号の報告。
高齢者における睡眠対策と認知症との関係を調査するため、English Longitudinal Study of Ageing(ELSA)のデータを用いた。さらに、Cox回帰モデルおよびメンデルランダム化(MR)分析を用いて、因果関係を調査した。
主な結果は以下のとおり。
・対象高齢者7,223人のうち、5.7%が平均8±2.9年以内に認知症を発症した(アルツハイマー病は1.7%)。
・8時間超の長時間睡眠は、理想的な睡眠時間(7~8時間)の場合と比較し、認知症発症リスクが64%増加し、アルツハイマー病のリスクが2倍高かった。
・この関連は、とくに70歳以上およびアルコールを摂取する高齢者において、顕著であった。
・7時間未満の短時間睡眠は、高齢になるほど認知症リスクが低く、比較的若年の高齢者では認知症発症リスクが高かった。
・睡眠障害および自覚している睡眠の質は、認知症またはアルツハイマー病と関連していなかった。
・MR分析では、睡眠時間と認知症との因果関係が確認されなかった。
著者らは「これらの睡眠パターンを早期に検出することは、認知症リスクの高い人の特定に役立つであろう」としている。
(鷹野 敦夫)