日本における片頭痛患者にみられる実際の臨床的特徴や治療実践については、十分に調査されていない。慶應義塾大学の滝沢 翼氏らは、近年の片頭痛の臨床実態、現在の治療選択肢では十分にコントロールできていない可能性のある患者の特徴を明らかにするため、レセプトデータベースを用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。The Journal of Headache and Pain誌2024年2月8日号の報告。
大規模レセプトデータシステムJMDCデータベースを用いて調査を行った。2018年1月~2022年7月に頭痛または片頭痛と診断された患者を対象とした頭痛コホート、頭痛コホート内で片頭痛と診断され片頭痛治療薬を使用した患者を対象とした片頭痛コホートとして定義し、検討を行った。頭痛コホートでは、医療機関の特徴、二次性頭痛を鑑別するための画像検査の状況を検討した。片頭痛コホートでは、急性期およびまたは予防的治療では十分にコントロールできていない可能性のある患者の治療パターン、および特徴を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・頭痛コホートには、98万9,514例(女性の割合:57.0%、平均年齢:40.3歳)が含まれた。1次診断のために診療所(19床以下)を受診した患者の割合は77.0%、CTおよびまたはMRIによる画像診断を行った患者の割合は30.3%であった。
・片頭痛コホートでは、16万5,339例(女性の割合:65.0%、平均年齢:38.8歳)が含まれ、95.6%が急性期治療を行い、20.8%が予防的治療を実施していた。
・片頭痛治療の初回選択肢は、アセトアミノフェン/非ステロイド系抗炎症薬(54.8%)が最も高く、次いでトリプタン(51.4%)であった。
・初回治療では、15.6%に予防的治療が含まれていた。4回目治療時には、予防的治療の実施割合が82.2%へ増加していた。
・12ヵ月以上のフォローアップ調査を行った患者のうち、薬物乱用頭痛のリスクが示唆される処方パターンが3.7%に認められた。これらの患者の特徴として、女性の割合が高い、併存疾患の有病率が高いが挙げられた。
著者らは「この研究により、医療機関に来院する片頭痛患者の約5分の1は、予防薬を使用していることが明らかとなった」とし、また、薬物乱用頭痛のリスクがある潜在的患者と片頭痛治療における診療所の役割についても述べた。
(鷹野 敦夫)