歯の喪失には、さまざまな原因があるが、その原因別に健康への影響を評価した研究は、これまでなかった。東北大学の草間 太郎氏らは、現在また過去の喫煙歴と認知症リスクとの関連が、歯の喪失により媒介されるかを評価した。Journal of Clinical Periodontology誌オンライン版2024年2月7日号の報告。
65歳以上の成人を対象に、9年間のフォローアッププロスペクティブコホート研究を実施した。アウトカムは2013~19年の認知症罹患率、エクスポージャーは2010年の喫煙状況(非喫煙、喫煙歴あり、現在の喫煙)、メディエーターは2013年の残存歯数(19本以下、20本以上)として評価した。媒介分析を用いてCox比例ハザードモデルを適合させ、歯の喪失による認知症発症に対する喫煙の自然間接効果(NIE)のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)、およびそれらの媒介比率を推定した。
主な結果は以下のとおり。
・参加者は3万2,986人(平均年齢:72.6±5.4歳、男性の割合:48.4%)。
・フォローアップ期間中の認知症発症率は、2.11/100人年であった。
・歯の喪失は、喫煙歴ありおよび現在の喫煙と認知症発症率との関係と有意に関連していた。
・喫煙歴ありおよび現在喫煙者は、非喫煙者と比較し、残存歯数が少ないNIEは、HRが1.03(95%CI:1.02~1.05)、媒介比率が18.0%であった。
著者らは「歯の喪失は、喫煙歴や現在の喫煙と高齢者の認知症リスク増加との関連を強く媒介することが示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)