うつ病に対する抗うつ薬の治療反応を比較した長期的研究は不足している。デンマーク・Psychiatric Center CopenhagenのLars Vedel Kessing氏らは、うつ病患者に対する6つの抗うつ薬クラス17薬剤における2年間の治療反応を比較するため、システマティック人口ベース全国レジストリデータを報告した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2024年2月20日号の報告。
対象は、1995~2018年にデンマークの精神科病院で初めてうつ病と診断され、その後抗うつ薬治療を行った入院患者または外来患者10万6,920例。2年間の研究期間において、最初の抗うつ薬治療に反応しなかった患者の定義は、他の抗うつ薬への切り替え、抗精神病薬・リチウムへの切り替えまたは追加、入院とした。分析では、年齢、性別、社会経済的地位、精神症状・身体症状の併存に従って標準化された集団を対象とした試験を参照した。
主な結果は以下のとおり。
・セルトラリンと比較し、citalopramは差がみられなかったが、fluoxetine、パロキセチン、エスシタロプラムは、治療無反応のリスク比が高かった。
【citalopram】RR:1.00(95%信頼区間[CI]:0.98~1.02)
【fluoxetine】RR:1.13(95%CI:1.10~1.17)
【パロキセチン】RR:1.06(95%CI:1.01~1.10)
【エスシタロプラム】RR:1.22(95%CI:1.18~1.25)
・選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の中では、セルトラリンはreboxetineを上回っていた。
・セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の中では、ベンラファキシンはデュロキセチンを上回っていた。
・ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗うつ薬の中では、ミルタザピンはミアンセリンよりも良好な成績を示し、他の抗うつ薬クラスでは、セルトラリンがagomelatineおよびボルチオキセチンよりも良好な成績を示した。
・三環系抗うつ薬では、アミトリプチリンと比較し、ノルトリプチリン、ドスレピン、クロミプラミンの治療無反応率が高かったのに対し、イミプラミンには差が認められなかった。
著者らは「リアルワールドデータを用いた分析では、抗うつ薬使用2年間の長期的な治療無反応は、一部の抗うつ薬において増加している可能性が示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)