統合失調症患者の脳容積の長期的な減少と認知機能との関連

提供元:ケアネット

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公開日:2024/04/05

 

 統合失調症の脳バイオマーカーを確立することは、精神科医による診断サポートに寄与するだけでなく、疾患経過に伴う脳の進行性変化をフォローするうえで重要となる。最近の研究報告では、統合失調症患者の脳の形態学的特徴が示されており、健常な人と比較し、脳容積が減少した脳領域クラスターにより定義されている。この兆候は、統合失調症患者と健康な人を鑑別するうえで有効であることが証明されており、統合失調症の脳バイオマーカーの有望な候補であることが示唆されている。しかし、長期的な特徴については、いまだ不明なままであった。東京慈恵会医科大学の山崎 龍一氏らは、統合失調症患者の脳容積の変化が時間経過とともにみられるのか、それが臨床アウトカムと関連しているのかについて調査を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌2024年3月号の報告。

 主な結果は以下のとおり。

・統合失調症患者では、健康な人における年齢に伴う自然な脳容積の減少よりも、より大きな減少を伴う脳の形態学的に有意な変化がみられ、この変化が脳の進行性の形態学的変化を表していることが示唆された。
・さらに、脳の形態学的特徴の変化とフルスケールIQの変化との間に有意な関連が認められた。
・IQが改善した患者では、脳の形態学的特徴が維持されていたのに対し、IQの改善が認められなかった患者では、脳の形態学的特徴に進行性の変化がみられた。このことから、知的能力の回復の可能性と脳病変の進行速度との関連性が示唆された。

 著者らは、「脳の形態学的特徴は、統合失調症患者の認知機能障害と関連する脳の進行性変化を評価するために使用可能な脳バイオマーカーである」と結論付けた。

(鷹野 敦夫)