切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第III相無作為化二重盲検比較試験(CheckMate 77T試験)において、周術期にニボルマブを用いるレジメンが良好な結果を示したことがすでに報告されている。本レジメンは、術前にニボルマブと化学療法の併用療法を4サイクル実施するが、有害事象などにより4サイクル実施できない患者も存在する。そこで、CheckMate 77T試験において術前薬物療法が4サイクル未満であった患者の治療成績が検討され、4サイクル未満の患者でも周術期にニボルマブを用いるレジメンが治療成績を向上させることが示された。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のMark M. Awad氏が、欧州肺がん学会(ELCC2024)で報告した。
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化二重盲検比較試験
・対象:StageIIA〜IIIB(American Joint Committee on Cancer[AJCC]第8版)の切除可能NSCLC患者
・試験群:ニボルマブ(360mg、3週ごと)+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→ニボルマブ(480mg、4週ごと)を最長1年(ニボルマブ群、229例)
・対照群:プラセボ+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→プラセボを最長1年(プラセボ群、232例)
評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づく無イベント生存期間(EFS)
[副次評価項目]盲検下独立病理判定に基づく病理学的完全奏効(pCR)、病理学的奏効(MPR)、安全性など
今回報告された主な結果は以下のとおり。
・ニボルマブ群の17%(38例)、プラセボ群の12%(27例)が術前薬物療法を3サイクル以下で中止した。このうち、有害事象による中止はそれぞれ55%(21例)、41%(11例)であった。
・術前薬物療法のサイクル数別にみたEFS中央値は以下のとおり。
-4サイクル完了:ニボルマブ群未到達、プラセボ群未到達(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.42~0.79)
-4サイクル未満:それぞれ未到達、7.8ヵ月(同:0.51、0.23~1.11)
・術前薬物療法のサイクル数と手術の有無別にみたpCR率は以下のとおり。
-4サイクル完了:ニボルマブ群26.7%、プラセボ群5.4%(群間差:21.3%、95%CI:14.3~28.4)
-4サイクル未満:それぞれ18.4%、0%(同:18.4%、2.9~33.4)
-4サイクル完了かつ手術あり:それぞれ32.3%、6.5%(同:25.7%、17.4~33.9)
-4サイクル未満かつ手術あり:それぞれ35.0%、0%(同:35.0%、2.5~56.7)
・術前薬物療法のサイクル数と手術の有無別にみたMPR率は以下のとおり。
-4サイクル完了:ニボルマブ群38.2%、プラセボ群13.7%(群間差:24.6%、95%CI:16.1~32.7)
-4サイクル未満:それぞれ21.1%、0%(同:21.1%、5.1~36.3)
-4サイクル完了かつ手術あり:それぞれ46.2%、16.7%(同:29.5%、19.6~38.7)
-4サイクル未満かつ手術あり:それぞれ40.0%、0%(同:40.0%、6.9~61.3)
・無作為化された全患者および術前薬物療法のサイクル数別にみた死亡または遠隔転移までの期間の中央値は以下のとおり。
-全患者:ニボルマブ群未到達、プラセボ群38.8ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.44~0.85)
-4サイクル完了:それぞれ未到達、38.8ヵ月(同:0.61、0.42~0.88)
-4サイクル未満:それぞれ未到達、10.9ヵ月(同:0.46、0.22~0.98)
・術後薬物療法を受けた患者の割合は、術前薬物療法を4サイクル完了した集団ではニボルマブ群69%(131例)、プラセボ群71%(145例)であり、4サイクル未満の集団ではそれぞれ29%(11例)、26%(7例)であった。術後薬物療法のサイクル数中央値は、いずれの集団においても両群13サイクルであり、多くの患者が術後薬物療法を完了した。
Awad氏は、本結果について「CheckMate 77T試験の探索的解析において、切除可能NSCLC患者に対する周術期のニボルマブ上乗せは、術前薬物療法4サイクル完了の有無にかかわらず有効であった。手術を実施した患者集団において、4サイクル完了した患者集団と4サイクル未満の患者集団のpCR率とMPR率は同様であった」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)