米国のミドルからシニアクラスの女性臨床研究医を対象とした定性的インタビュー調査によると、アカデミックな医学界は男性中心的な制度であり、構造的不公平が女性のキャリア全体にわたって持続し、キャリアアップにおけるジェンダー格差のパターンに陥っていることが示唆された。本研究は、米国・ミシガン大学のLauren A. Szczygiel氏らによって実施された。JAMA Network Open誌2024年4月11日号に掲載。
本研究は、ミドルからシニアのキャリアを有する女性臨床研究医の日常的な職業経験において、キャリアを通じて経験したジェンダーに関連する障壁についての認識を調査することを目的とした。2006~09年に米国国立衛生研究所の若手臨床研究医のキャリア支援のグラントであるK08またはK23を受賞した女性臨床研究医で、調査に同意した60人のうち、無作為選択的サンプリングで31人が選ばれた。2022年1~5月に半構造化面接を実施し、テーマ分析のフレームワークアプローチを用いて2023年8~10月に解析した。
主な結果は以下のとおり。
・女性臨床研究医31人の人種は、白人14人(45.2%)、アジア系8人(25.8%)、自身を医学界でマイノリティと認識している者9人(29.0%)。
・年齢は、40代14人(45.2%)、50代14人(45.2%)、60代3人(9.7%)。
・17人(54.8%)はケアが必要な子供がおり、7人(22.6%)はケアが不要な子供がおり、6人(19.4%)は子供がいなかった。
・参加者は、助教授1人(3.2%)、准教授11人(35.5%)、教授14人(45.2%)、名誉教授1人(3.2%)、医学研究を辞めた者4人(12.9%)であった。
・調査で得られた回答には、以下の4つの主なテーマが確認された。
(1)職場と家庭におけるジェンダー化された期待による精神的負担
時間の不足と精神的負荷による、キャリアと家庭生活のトレードオフという考えが最も言及された。子育てが生産性への大きな打撃を伴い、キャリアに長期的な影響を与えると認識していた。
(2)官僚的プロセスにおける女性の不公平な扱い
資源配分、補助金の申請と授与方針、昇進と在職期間のプロセスにおける不平等が原因で、キャリアの復帰や維持が困難であることが挙げられた。厳格な資金調達や昇進のスケジュールと、出産や子育ての責任との間に矛盾が生じていることが指摘された。
(3)些細または些細でない女性に対する職業上の排除
組織内の専門家や社会的サークルから排除され、権力、指導、専門的昇進へのアクセスに影響を与えた例として、男性と女性が同じ指導者と交わす会話の種類に違いがあり、男性は科学的なトレーニングに基づいた指導を受けていたのに対し、女性は仕事と生活のバランスに重点が置かれていたことなどが挙げられた。また、女性には、組織内で報酬や権限と結びつかない奉仕指向の役割を果たすことへの高い期待を持たれたことが挙げられた。
(4)共有されたアイデンティティ、経験、連帯感に基づいて構築されたコミュニティの価値
試験参加者が女性へのバイアスに直面した際、他の女性と経験を共有することが、ジェンダーバイアスに対処する重要な方法であり、他の女性から同様の経験を聞くことで「孤立感」が軽減され、女性たちが直面する課題は、女性自身の欠陥ではなくシステムレベルの不平等を表していることを理解するのに重要だったことが述べられた。同性のコミュニティにより解決への戦略的アドバイスがもたらされた。一方で、このようなネットワークを見つけ、維持することの難しさも指摘された。
本研究の結果、女性は医学界が女性のニーズに合わない男性中心のシステムであると認識し、それに伴う排除感、幻滅感、組織に対する信頼の喪失を感じていることが判明した。この調査結果は、家庭内での義務と、不寛容な組織環境とが重なり合うことで、女性臨床研究医がキャリアアップを達成することが困難になっている可能性を示唆している。著者は本結果について、医学界における女性の幸福やキャリアの維持に長期的な影響を及ぼしうるという見解を示し、教育機関などが現在の構造に対する取り組みを検討しなければならないと述べている。
(ケアネット 古賀 公子)