日本の大学で医学部長や病院長になる人の特徴は?

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/02/14

 

 日本の医療機関における重要なリーダーである医学部長と大学病院長について、性別、出身大学、専門領域などの傾向を調べるため、島根大学およびミシガン大学の和足 孝之氏らの研究グループが調査を実施した。その結果、日本の82大学の医学部長と病院長はすべて男性で、日本の医学部を卒業し、博士号を取得していることなどが示された。JAMA Network Open誌2024年1月11日号Research Letterでの報告。

 本調査では、2022年6月1日時点で文部科学省に認可されている全国82校の国公私立大学について、医学部長および病院長を特定し、性別、医学部卒業からの年数、出身大学、専門領域、研究分野、博士号の取得歴などについて記述統計による解析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・82大学の医学部長82人および病院長82人の計164人はすべて男性で、日本の医学部を卒業していた。
・全員が博士号を取得し、そのうち98.8%が基礎医学研究であった。
・卒後年数の中央値は38年(IQR 36~40)で、年齢は約63~64歳に相当する。
・医学部長および病院長の専門は内科が最も多く(37人[22.6%])、次いで外科(30人[18.3%])、基礎医学(14人[8.5%])、泌尿器科(10人[6.1%])であった。
・医学部長では基礎医学・病理学の教員であることが最も多く(22人[26.8%])、病院長では外科の教員であることが最も多かった(51人[62.2%])。
・旧帝国大学7校および上位17校と、そのほかの大学を比較すると、医学部長や病院長は、現在の所属校の卒業生であることが多く、かつ旧帝国大学の卒業生であることが多かった。
・国公立校と私立校を比較した場合にも、OBや旧帝国大学出身者の割合が高いことが示された。

 著者らは本結果について、「日本の大学医学部および大学病院には女性のリーダーが不在であり、リーダーの多様性が欠如していることが明らかになった。これは日本に限ったことではなく、米国では女性の医学部長が11~13%である。本結果は医学学会の会長の年功序列とジェンダーバイアスを示す先行研究と一致している。さらに、社会医学(経営学、公衆衛生学、医学教育、医療の質、患者の安全など)の学位を持つ高位のリーダーが少ないことも反省すべき点である。こうした顕著な傾向は、専門知識や教育法などの社会への普及を制限する可能性があることから、改善に取り組まなければならない」とまとめている。

(ケアネット 古賀 公子)