トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者はBRCA1/2遺伝子変異を有する割合が高く、約10〜20%とされている。今回、韓国・Sungkyunkwan University School of MedicineのWoong Ki Park氏らが、TNBC患者の長期アウトカムを後ろ向きに検討したところ、BRCA1/2遺伝子変異が対側乳がん発生のリスク因子であることがわかった。また、対側乳がん発生率は、BRCA1/2変異患者では5年を過ぎても大幅に高かったという。npj Precision Oncology誌オンライン版2024年4月30日号に掲載。
本研究の対象は、2008年6月~2016年1月に原発性乳がんの手術を受けたTNBC患者953例。追跡期間中央値80.9ヵ月(範囲:3~152ヵ月)における対側乳がん発生率、再発パターン、生存率などの長期アウトカムを評価した。
主な結果は以下のとおり。
・122例(12.8%)がBRCA1/2遺伝子変異を有していた。
・BRCA1/2遺伝子変異のある患者は診断時年齢が有意に若く、乳がん/卵巣がんの家族歴がある傾向が強かった。
・60ヵ月(5年)、120ヵ月(10年)、150ヵ月(12.5年)時点の対側乳がん発生率は、BRCA1/2遺伝子変異のある患者が変異のない患者に比べ有意に高かった(順にp=0.0250、0.0063、0.0184)。
・無病生存期間、全生存期間、乳がん特異的生存期間、無遠隔転移生存期間については、両群間に有意差は認められなかった。
・BRCA1/2遺伝子変異は対側乳がん発生の有意なリスク因子であった(HR:6.242、p<0.0001)。
・対側乳がんが発生した29例中24例(82.8%)が再びTNBCと診断され、19例(65.5%)が再発後に化学療法を受けていた。
これらの結果から、著者らは「TNBC患者において、リスク低減乳房切除術(RRM)のような外科的治療の決定には、適切な遺伝子検査とカウンセリングが重要」とし、さらに「BRCA1/2遺伝子変異のあるTNBC患者では、とくにRRMを受けていない患者において長期サーベイランスが必要」としている。
(ケアネット 金沢 浩子)