統合失調症における服薬アドヒアランスと自傷暴力行為との関係~12年間コホート研究

提供元:ケアネット

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公開日:2024/05/08

 

 服薬アドヒアランスは、十分な治療効果を得るために重要である。しかし、服薬アドヒアランス不良と自傷行為との関連性については、あまり知られていない。中国・四川大学のChuanlong Zuo氏らは、外来統合失調症患者において服薬アドヒアランス不良が自傷暴力行為に及ぼす影響、およびこの関連性が用量依存的な関係を示すかを評価するため、本研究を実施した。BMC Medicine誌2024年3月25日号の報告。

 中国西部の地域在住統合失調症患者29万2,667例を対象としたコホート研究を実施した。服薬アドヒアランスの指標として定期服薬の割合(PRM)を用いた。PRMは、フォローアップ期間中における抗精神病薬の定期的な服薬回数を投与期間で割り、算出した。服薬アドヒアランス不良と自傷暴力行為との関係の評価では、服薬アドヒランスは閾値0.8PRMの2値変数として指定し、用量依存的な関係の評価では、服薬アドヒアランスは5つのカテゴリと連続変数として指定した。交絡因子の制御および生存分析には、逆確率重み付けおよび混合効果Cox比例ハザードモデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・最終分析対象患者は、18万5,800例(平均年齢:47.49±14.55歳、女性の割合:53.6%)であった。
・服薬アドヒアランス不良と自傷暴力行為との関係では、服薬アドヒアランス不良群(PRM<0.8)は、良好群(PRM≧0.8)と比較し、自殺リスクが低く(ハザード比[HR]:0.527、95%信頼区間[CI]:0.447~0.620)、非自殺的自傷行為(NSSI)リスクが高く(HR:1.229、95%CI:1.088~1.388)、自殺企図リスクが有意ではなかった。
・用量依存的な関係の評価では、服薬アドヒアランスが最も低い群(PRM<0.2)は、自殺企図リスクの増加(HR:1.614、95%CI:1.412~1.845)、NSSIリスクの増加(HR:1.873、95%CI:1.649~2.126)、自殺リスクの減少(HR:0.593、95%CI:0.490~0.719)との関連が認められた。
・他の服薬アドヒアランス不良群は、3つの自傷暴力行為すべてのリスクが低かった。
・連続変数による服薬アドヒアランスと3つの結果との関係は、分類別の服薬アドヒアランスでの結果と一致していた。

 著者らは、「服薬アドヒアランスは、自殺企図やNSSIリスク増加と関連していないことから、服薬アドヒアランスの改善は、完全な自殺予防につながるわけではないことが示唆された。さらに、中等度のアドヒアランスを有する患者では、自殺企図やNSSIの発生率が低かった」とし、「服薬アドヒアランスをより詳細に観察していく必要性だけでなく、服薬アドヒアランスが良好な統合失調症患者においても、自殺企図により注意を払う必要性がある」とまとめている。

(鷹野 敦夫)

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