10年ほど前に話題になったDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食。それが今、塩分を排出させる食事として再注目されているようだ。DASH食とは、飽和脂肪とコレステロールの少ない果物、野菜、ナッツ・豆類、低脂肪乳製品、全粒穀類を豊富に摂取することで降圧効果が期待される“塩分の排出に重点を置いた食事療法”で、米国・国立衛生研究所(NIH)などが考案したのを契機に、国内の高血圧治療ガイドライン2019年版1)でも推奨されている。また、この食事療法に減塩を組み合わせたものはDASH-sodium食と呼ばれ、これまでに十分なエビデンスが報告されている2,3)。
しかし、日本人の食事パターンの観点から、塩分の取り過ぎを抑える“減塩”に重点が置かれる傾向にあり、「排塩を意識した高血圧対策」が進んでいないのが現状である。そこで今回、有馬 久富氏(福岡大学医学部衛生・公衆衛生学 主任教授)が、日本特有の四季折々の食事「和食」(日本人の伝統的な食文化)4)を大切にしながら、旬の食材を用いた排塩コントロールの実践を促すために、塩分の排泄を促すカリウムや食物繊維、血圧調整を担うカルシウム、血圧上昇抑制に影響するマグネシウムなどが豊富に含まれている初夏~夏の食材を紹介した。
●カリウム
トマト、レタス、なす、ズッキーニ、きゅうり、オクラ、ししとう、新じゃが、ゴーヤ、枝豆、アボカド
●カルシウム
とうもろこし、オクラ、ししとう、つるむらさき、モロヘイヤ、アジ、アユ
●マグネシウム
とうもろこし、オクラ、ししとう、ゴーヤ、枝豆、アボカド、わかめ、冷ややっこ
●食物繊維
とうもろこし、なす、オクラ、ゴーヤ、セロリ、枝豆、アボカド、くらげ
●タンパク質
カツオ(戻りカツオ)、枝豆、そら豆
<お薦めの調理方法>
・トマト、ズッキーニ、なすなどの夏野菜をトマト缶+少量だしで煮込む(ピザ用チーズや鶏肉を追加してもおいしい)
・刻んだきゅうりをもずくに入れて、冷ややっこにかける
・オクラ、なす、ししとうをゆがき(電子レンジでチンでも)、めんつゆとおかかで和える
・トマトとモッツァレラチーズにオリーブオイルとペッパー/バジルを少しかける
・初夏であれば、新じゃがを牛乳で煮込む
・生で食べられるトマト、きゅうり、とうもろこしにツナ缶を和える(豆腐を入れても)
調理時の注意点としては、「調味料(だしやしょうゆ、塩など)を入れ過ぎない。夏野菜カレーを作る場合は、ルーを入れ過ぎない。また、ゆでるより電子レンジでチンしたほうがカリウムをそのまま取りやすい。マグネシウムの観点から、きゅうりとわかめの酢の物などで海藻類を取るとよい」と同氏はコメントした。
なお、旬の食材を取り入れた食事について、医師が患者へ啓発する際には以下のように「患者の行動変容のステージングに応じて使い分けるのがよい」とも説明した。
無関心期⇒情報提供
(例)「食事を見直すことで血圧が下がりますよ。今の季節は○○(レシピ名)を使うと、旬の野菜をおいしく食べながら血圧を下げられますよ」
関心期⇒動機付け
(例)「どのような食事だと血圧が下がると思いますか? 今の季節は○○(レシピ名)を使うと、旬の野菜をおいしく食べながら血圧を下げられますよ」
準備期⇒行動案・目標設定
(例)「朝も昼も晩も野菜を取るようにしましょうか。今の季節は○○(レシピ名)を使うと、旬の野菜をおいしく食べながら血圧を下げられますよ」
実行期⇒意欲強化
(例)「食事に気を付けられているようで素晴らしいですね。今の季節は○○(レシピ名)がお薦めですよ」
また、この排塩による高血圧対策のプレスリリースを配信したCureApp5)は「高血圧患者さんがアプリの利用を開始すると、最初のステップとして、高血圧の知識を学ぶ。アプリ内のキャラクターが減塩や体重管理、運動などさまざまな項目の中のコンテンツを通じ、減塩のコツなどを教えてくれる。さらに、行動の実践と記録として、降圧に関わる具体的な行動をアプリで提示し、患者さんができそうなものを自ら選択・実践してアプリに記録することができ、その中で減塩や排塩に関する行動も提示される。患者さんがアプリで実践した行動は医師の端末で確認でき、指導に役立てることができる」とアプリの役割についてコメントした。
(ケアネット 土井 舞子)