未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬lazertinibの併用療法は、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告されている1)。EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者において、TP53遺伝子変異、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の検出、ベースライン時の肝転移または脳転移を有する場合は予後が不良であることが知られている。そこで、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、これらの予後不良因子を有する患者の治療成績が検討された。その結果、amivantamabとlazertinibの併用療法は、これらの予後不良因子を有する患者集団においても、オシメルチニブ単剤と比較してPFSを改善することが明らかになった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)において、スペイン・Vall d’Hebron University HospitalのEnriqueta Felip氏が本研究結果を報告した。
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験
・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者
・試験群1(ami+laz群):amivantamab(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+lazertinib(240mg、1日1回) 429例
・試験群2(laz群)lazertinib(240mg、1日1回) 216例
・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS(ami+laz群vs.osi群)
[副次評価項目]奏効率、全生存期間など
今回は、サブグループ別のami+laz群とosi群におけるPFSの比較結果が報告された。主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時にctDNAが検出された患者は、ami+laz群320例、osi群316例であった。
・ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)によってベースライン時にctDNAが検出された患者の割合は、ami+laz群69%、osi群71%であったが、9週時にctDNAが検出された患者の割合は、いずれの群も15%であった。
・サブグループ別のami+laz群およびosi群のPFS中央値、ami+laz群のosi群に対するハザード比(95%信頼区間)、p値は以下のとおり。
- TP53遺伝子変異あり:18.2ヵ月vs.12.9ヵ月、0.65(0.48~0.87)、p=0.003
- TP53遺伝子変異なし:22.1ヵ月vs.19.9ヵ月、0.75(0.52~1.07)、p=0.114
- ベースライン時にddPCRでctDNAあり:20.3ヵ月vs.14.8ヵ月、0.68(0.53~0.86)、p=0.002
- ベースライン時にddPCRでctDNAなし:27.7ヵ月vs.21.9ヵ月、0.68(0.53~0.86)、p=0.002
- 9週時にctDNA消失:20.3ヵ月vs.14.8ヵ月、0.64(0.48~0.87)、p=0.004
- 9週時にctDNA残存:16.5ヵ月vs.9.1ヵ月、0.49(0.27~0.87)、p=0.015
- ベースライン時に肝転移あり:18.2ヵ月vs.11.0ヵ月、0.58(0.37~0.91)、p=0.017
- ベースライン時に肝転移なし:24.0ヵ月vs.18.3ヵ月、0.74(0.60~0.91)、p=0.004
- 脳転移歴あり:18.3ヵ月vs.13.0ヵ月、0.69(0.53~0.92)、p=0.010
- 脳転移歴なし:27.5ヵ月vs.19.9ヵ月、0.69(0.53~0.89)、p=0.005
Felip氏は、本結果について「amivantamabとlazertinibの併用療法は、予後不良因子を有する患者においてもPFSを改善した。したがって、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の1次治療における新たな標準治療として有望である」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)