HER2+(IHC 3+またはIHC 2+/ISH+)の進行・転移乳がんの1次療法として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)単独療法とT-DXd+ペルツズマブ併用療法の有用性を検討した第Ib/II相DESTINY-Breast07試験の中間解析の結果、両群ともに12ヵ月無増悪生存(PFS)率は80%以上であり、薬剤性間質性肺疾患(ILD)による死亡は認められなかったことを、フランス・Gustave RoussyのFabrice Andre氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。
DESTINY-Breast07試験は、HER2+の進行・転移乳がん患者を対象に、T-DXd単独または他の抗がん剤との併用による安全性、忍容性および抗腫瘍活性を検討する国際共同無作為化非盲検第Ib/II相試験。用量漸増パートと用量拡大パートで構成され、今回は1次療法としてのT-DXd±ペルツズマブを評価した用量拡大パートの中間解析の結果が報告された。
対象は、術後補助療法から12ヵ月以上の無病期間があり、測定可能な病変があり、脳転移がない/または既治療で安定状態で、進行・転移に対する治療を受けていないHER2+の進行・転移乳がん患者であった。T-DXd単独群(5.4mg/kgを3週間間隔)とT-DXd+ペルツズマブ併用群(T-DXd:5.4mg/kg+ペルツズマブ:初回840mg、2回目以降420mgを3週間間隔)に無作為化された。主要評価項目は安全性と忍容性、主要副次評価項目は、治験責任医師評価による奏効率(ORR)およびPFS、奏効期間(DOR)であった。
主な結果は以下のとおり。
・T-DXd単独群75例、T-DXd+ペルツズマブ併用群50例が治療を受けた。両群の患者プロファイルはおおむねバランスがとれていたが、HR+(62.7%および68.0%)、de novo(64.0%および60.0%)の割合で差がみられた。追跡期間中央値はそれぞれ23.9ヵ月(治療継続中が62.7%)、25.3ヵ月(56.0%)であった(データカットオフ:2023年12月22日)。
・12ヵ月PFS率は、単独群80.8%(80%信頼区間[CI]:73.7~86.1)、併用群89.4%(81.9~93.9)であった。
・ORRは、単独群76.0%(80%CI:68.5~82.4)、併用群84.0%(75.3~90.5)であった。CRはそれぞれ8.0%、20.0%であった。
・DOR中央値は両群とも評価不能(NE)であったが、範囲は単独群2.1~28.5ヵ月、併用群4.5~28.3ヵ月であった。12ヵ月DOR率はそれぞれ76.0%、84.0%であった。
・有害事象(AE)は両群ともに100%に発現した。Grade3以上のAEの発現率は、単独群52.0%、併用群62.0%であった。単独群では、治療に関連しない死亡が1例報告された(新型コロナウイルス感染症の罹患後症状)。
・頻度の高いAEは、悪心(単独群71%[うちGrade3以上が4%]、併用群68%[0%])、好中球減少症(36%[27%]、38%[24%])、嘔吐(36%[3%]、40%[0%])、下痢(35%[3%]、62%[6%])などであった。ILDは、それぞれ9.3%、14.0%に認められたが、死亡例は認められなかった。新たな安全性シグナルはみられなかった。
DESTINY-Breast07試験は進行中であり、第III相DESTINY-Breast09試験の解析結果により、HER2+の進行・転移乳がんの1治療法としてのT-DXd±ペルツズマブに関する確定的なデータが得られる予定。
(ケアネット 森 幸子)