小児期の睡眠障害、若年期の精神病リスクにつながる可能性

提供元:ケアネット

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公開日:2024/07/05

 

 短時間睡眠は、短期・中期・長期的に子どもの発達に有害な影響を及ぼす可能性があることがこれまでも報告されているが、新たな報告によると、小児期に持続的に睡眠時間が短いと、若年期の精神病発症リスクが上がる可能性があるという。英国・バーミンガム大のIsabel Morales-Munoz氏らによる本研究結果は、JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年5月8日号に掲載された。

 研究者らは小児期における持続的な夜間睡眠時間の短さと、24歳時点での精神病体験(PE)および/または精神病性障害(PD)との関連、および炎症マーカー(C反応性蛋白[CRP]およびインターロイキン6[IL-6])が関連するかを検討するコホート研究を実施した。

 英国の出生コホート研究であるAvon Longitudinal Study of Parents and Childrenのデータを用い、6ヵ月、18ヵ月、30ヵ月、3.5歳、4~5歳、5~6歳、6~7歳の時点の夜間睡眠データを収集した。24歳時にPEとPDをPsychosis-like Symptoms Interview(PLIKSi)で評価した。RP値とIL-6値は9歳・15歳時に血液採取で測定した。夜間睡眠時間の軌跡を検出するために潜在クラス成長分析(LCGA)を適用し、24歳時点の精神病転帰との縦断的関連についてロジスティック回帰を、CRP値とIL-6値が潜在的な媒体因子であることを検証するためにパス解析を行った。データ解析は2023年1月30日~8月1日に実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・小児1万2,394例(女児6,254例[50.5%])、ロジスティック回帰とパス分析では若年成人3,962例(女性2,429例[61.3%])のデータが得られた。
・LCGAにより、小児期を通じて夜間の睡眠時間が4クラスに分けられた。持続的睡眠時間が最も短い群(301例[2.4%])は、24歳時のPD(オッズ比[OR]:2.50、95%信頼区間[CI]:1.51~4.15、p<0.001)およびPE(OR:3.64、95%CI:2.23~5.95、p<0.001)のリスクが有意に高かった。
・9歳時のIL-6値の上昇は、持続的な睡眠時間の短さとPD(バイアス補正推定値=0.003、95%CI:0.002~0.005、p=0.007)およびPE(バイアス補正推定値=0.002、95%CI:0~0.003、p=0.03)との関連を部分的に媒介していた。9歳時または15歳時のCRP値にこうした関連は見られなかった。

 研究者等は「乳児期から小児期までの睡眠時間が持続的に短い群は、24歳時の精神病の有病率が有意に高かった。さらに、9歳時のIL-6値の上昇がこれらの関連を部分的に媒介しており、IL-6値で測定される炎症が潜在的な機序経路の1つである可能性がある。この結果は小児期における短時間睡眠への対処の必要性を強調しており、睡眠と炎症反応の両方に対する、将来的な介入に関する予備的な証拠ともなる」とした。

(ケアネット 杉崎 真名)