HER2+乳がんに対する周術期至適治療を検討/日本乳癌学会

提供元:ケアネット

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公開日:2024/07/23

 

 HER2+乳がんの周術期治療選択において、Stage Iやリンパ節転移陰性のStage II(T2N0)でのレジメン選択や術前化学療法の適応は施設間で考え方に違いがある。今回、船橋市立医療センターの松崎 弘志氏らは、これらのStageに対する至適な治療法を明らかにするため、手術を実施したHER2+乳がんについて後ろ向きに評価し、第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 本研究は、1994年4月~2021年11月に手術を実施したHER2+乳がん350例を対象とし、Stage別の治療法と無再発生存率(RFS)の関係、Stage Iにおける腫瘍径およびトラスツズマブ追加の有無とRFS 、Stage IIAにおけるT2N0とT1N1の相違、T2N0例におけるペルツズマブ追加とRFSについて、後ろ向きに検討した。

 主な結果は以下のとおり。

■Stage別の治療法と5年RFSの関係
・全Stage(350例)において、トラスツズマブありが84.5%、なしが63.6%とトラスツズマブで有意な予後改善を認めた。
・Stage I(113例)では、無治療が78.6%と低く、トラスツズマブのみは90%、化学療法のみは90.9%と高く、化学療法+トラスツズマブでは再発例はなかった。
・Stage II(172例)では、化学療法のみでは62.6%と不良であったが、トラスツズマブのみで79.4%、化学療法+トラスツズマブで89.1%であった。
・Stage III(65例)では、化学療法+トラスツズマブでも55.6%と予後不良だった。

■Stage Iにおける腫瘍径およびトラスツズマブ追加の有無とRFS
・腫瘍径別では、T1c(63例) が95.2%と最も高く、T1b(19例) 94.7%、T1mi (17例)92.3%で、T1a は14例と少ないものの局所も含めた再発が4例あり、77.1%と低かった。
・Stage I全体でトラスツズマブ投与の有無別では、トラスツズマブなしが85.0%に対し、ありが98.6%と有意な改善がみられ、化学療法の有無にかかわらず投与症例での再発は1例のみだった。

■Stage IIAにおけるT2N0とT1N1の相違、T2N0例におけるペルツズマブ追加とRFS
・T2N0(96例)が87.2%、T1N1(21例)が68.2%と、T1N1で予後不良な傾向がみられた。
・T2N0で化学療法+トラスツズマブを投与した症例において、ペルツズマブありが88.9%、なしが93.5%と明らかな差はみられなかったが、ペルツズマブ投与群では再発がなかった(検討症例の時期から、ペルツズマブ投与は12例にとどまっており、観察期間も短かった)。

 松崎氏は、「T1ではトラスツズマブを投与した73例中、再発は1例のみであり、予後改善のための術前化学療法の意義は少ない。一方、トラスツズマブなしではT1a以下の腫瘍径でも再発を認め、投与すべき」と述べ、「T1bおよびT1cは、化学療法+トラスツズマブの適応だが、ペルツズマブ追加の必要性には乏しく、APT試験の結果を合わせ、アントラサイクリン省略も考慮される」と考察した。一方、「Stage IIAでは化学療法+トラスツズマブ投与でも一定数の再発を認め、ペルツズマブが必須、さらには術前化学療法(レスポンスガイド)による予後向上を目指すべきで、T2N0においてもこれらは同様と考える」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)