腎機能低下RAへの生物学的製剤、安全性・有効性が明らかに

提供元:ケアネット

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公開日:2024/07/30

 

 血液透析(HD)患者を含む慢性腎臓病(CKD)を併存する関節リウマチ(RA)患者の治療薬についてのエビデンスは限られている。今回、虎の門病院腎センター内科・リウマチ膠原病科の吉村 祐輔氏らはCKD患者における生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)の有効性・安全性を明らかにした。腎機能低下群においてもbDMARDの継続率はおおむね保持され、とくに、インターロイキン-6(IL-6)阻害薬は、推定糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2未満の患者で薬剤継続率が有意に高く、無効による中止が少なかったことから、IL-6阻害薬はほかの bDMARDと比較し、単剤での治療がより有効であることを示唆した。Annals of the Rheumatic Diseases誌オンライン版2024年7月4日号掲載の報告。

 本研究は、国内のHD患者を含むCKDを伴うRA患者において、最初に用いられたbDMARDの有効性・安全性を評価することを目的に、2004~21年に2つの医療機関でbDMARDを新規処方されたRA患者425例を対象に後ろ向きコホート研究を実施した。対象患者を腎機能レベルと処方されたbDMARDの作用機序別(TNFα阻害薬、IL-6阻害薬、アバタセプト[CTLA-4 Ig])で分類し、bDMARDの初回処方日から(1)最初のbDMARDの中止、(2)全死因死亡、(3)中止(追跡不能による打ち切り/2021年12月末の観察期間終了に伴う打ち切り)のいずれか早い日まで追跡調査した。

 主要評価項目は薬剤の36ヵ月継続率で、副次評価項目は疾患活動性評価-C反応性蛋白/赤血球沈降速度(DAS28- CRP/ESR)の変化、プレドニゾロン投与量、薬剤中止理由(無効、感染、副作用、その他)などが含まれた。

 主な結果は以下のとおり。

・CKDステージはG1:165例、G2:140例、G3a:36例、G3b:14例、G4:27例、G5:43例だった。
・処方の内訳はTNFα阻害薬347例(インフリキシマブ:112例、エタネルセプト:98例、セルトリズマブ:65例、ゴリムマブ:45例、アダリムマブ:27例)、IL-6阻害薬36例(トシリズマブ:34例、サリルマブ:2例)、アバタセプト42例だった。
・eGFR(mL/分/1.73m2)区分を≥60、30~60、<30の3つに分け、薬剤の作用機序別に36ヵ月継続率を調査したところ、全bDMARD(45.2%、32.0%、41.4%)、TNFα阻害薬(45.3%、28.2%、34.0%)、IL-6阻害薬(47.4%、66.7%、71.4%)、アダパセプト(42.9%、37.5%、33.3%)であった。
・腎機能低下群においてもbDMARDの継続率はおおむね保持されたが、eGFR<30患者のTNFα阻害薬の継続率はGFR≥60と比較し有意に低かった。
・一方、IL-6阻害薬はeGFR<30患者において最も継続率が高く、無効による中止率も最も低かった (ハザード比:0.11、95%信頼区間:0.02~0.85、p=0.03)。
・eGFR<30の患者のサブ解析において、HD患者と非HD患者でbDMARDの36ヵ月継続率に有意差を認めなかった。
・全bDMARDは、すべてのグループにおいてDAS28-CRP/ESRを改善し、プレドニゾロンの投与量を減らした。
・CKDが進行してもbDMARDの薬剤継続率は大幅に低下しなかった。

 研究者らは「本研究結果より、HD患者を含むCKD合併RA患者に対する効果的かつ安全な治療選択肢として bDMARD、とくにIL-6阻害薬の検討を支持する」としている。

(ケアネット 土井 舞子)