双極性障害は、うつ病エピソードから発症することが多く、初期にはうつ病と診断されることが少なくない。杏林大学の櫻井 準氏らは、双極性障害患者における過去のうつ病診断歴が臨床アウトカムに及ぼす影響を調査するため、本研究を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年7月2日号の報告。
2005年1月〜2020年10月のJMDCの医療保険請求データを用いて、日本で双極性障害と新たに診断された18〜64歳の患者データを分析した。双極性障害と診断された月を、インデックス月と定義した。過去のうつ病診断歴およびその期間(1年以上、1年未満)により層別化し、精神科入院、すべての原因による入院、死亡率を評価した。ハザード比(HR)、p値の推定には、Cox比例ハザードモデルを用い、潜在的な交絡因子で調整し、ログランク検定によりサポートした。
主な結果は以下のとおり。
・分析対象患者5,595例のうち、うつ病診断歴を有していた患者は2,460例、うつ病診断期間1年以上は1,049例、1年未満は1,411例であった。
・うつ病歴があった患者となかった患者の比較における、各HRは次のとおりであった。
【精神科入院】HR:0.92、95%信頼区間[CI]:0.78〜1.08、p=0.30
【すべての原因による入院】HR:0.87、95%CI:0.78〜0.98、p=0.017
【死亡率】HR:0.61、95%CI:0.33〜1.12、p=0.11
・うつ病歴が1年以上と1年未満の比較における、各HRは次のとおりであった。
【精神科入院】HR:0.89、95%CI:0.67〜1.19、p=0.43
【すべての原因による入院】HR:0.85、95%CI:0.71〜1.00、p=0.052
【死亡率】HR:0.25、95%CI:0.07〜0.89、p=0.03
著者らは「うつ病診断歴およびその期間は、双極性障害診断後の精神科入院リスクを高めることはなく、入院率や死亡率の低下と相関している可能性が示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)