これまでの研究では、スタチンの使用と認知症リスク低下との関連が示唆されているが、とくに超高齢社会である日本においては、この関連性は十分に検討されていない。大阪大学の戈 三玉氏らは、65歳以上の日本人高齢者を対象にスタチン使用と認知症リスクとの関連を調査した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2024年7月1日号の報告。
2014年4月~2020年12月の17自治体におけるレセプトデータを含むLIFE研究(Longevity Improvement & Fair Evidence Study)のデータを用いて、ネステッドケースコントロール研究を実施した。年齢、性別、自治体、コホート参加年のデータに基づき、1症例を5対照群とマッチさせた。オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)の算出には、条件付きロジスティック回帰モデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・対象は、症例群5万7,302例および対照群28万3,525例。女性の割合は、59.7%であった。
・潜在的な交絡因子で調整したのち、スタチン使用は認知症(OR:0.70、95%CI:0.68〜0.73)およびアルツハイマー病(OR:0.66、95%CI:0.63〜0.69)のリスク低下との関連が認められた。
・スタチン未使用者と比較した用量分析における認知症のORは、次のとおりであった。
【1日当たりの総標準投与量(TSDD):1〜30】OR:1.42、95%CI:1.34〜1.50
【TSDD:31〜90】OR:0.91、95%CI:0.85〜0.98
【TSDD:91〜180】OR:0.63、95%CI:0.58〜0.69
【TSDD:180超】OR:0.33、95%CI:0.31〜0.36
著者らは「日本人高齢者に対するスタチン使用は、認知症およびアルツハイマー病のリスク低下と関連しており、スタチンの累積投与量が少ない場合には、認知症リスクが高まるが、多い場合には認知症の保護因子となりうることが示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)