塩野義製薬は7月29日の第1四半期決算説明会にて、新型コロナウイルス感染症治療薬のゾコーバ(一般名:エンシトレルビル フマル酸)について、現在流通する3剤の経口コロナ治療薬の中でシェアを拡大し、とくに2024年4月以降は重症化リスク因子を有する患者への処方が多く、7月第3週時点でシェア67.6%に達したことを明らかにした。ゾコーバの重症化リスクのある患者の入院抑制効果など、リアルワールドエビデンスが蓄積されていることについて、以下のとおり説明された。
入院リスクを37%減少
本剤が日本で緊急承認された2022年11月22日~2023年7月31日の期間において、国内の18歳以上のCOVID-19来院患者16万7,310例を対象に、レセプトデータベース(JMDC)を用いた入院抑制効果について、ゾコーバ群5,177例と標準対症療法群(抗ウイルス薬治療なし)16万2,133例とを比較して、投与から1ヵ月間の入院率を検証した。本結果は、Infectious Diseases and Therapy誌2024年8月号に掲載された
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本試験の結果、主要評価項目である理由を問わない入院イベントに関して、ゾコーバ群は対症療法群と比較して、約37%入院リスクが減少し、有意に入院イベントを抑制した(入院リスク:ゾコーバ群:0.494% vs.対症療法群:0.785%、リスク比:0.629[95%信頼区間[CI]:0.420~0.943]、リスク差:-0.291[-0.494 ~-0.088])。
本結果について同社は、オミクロン流行下でワクチン接種済みの患者が多い環境下においても、早期に本剤を服用することにより重症化を抑制できることを強く示唆するデータが得られたと見解を述べた。
症状消失に関するグローバル第III相試験
また、患者1,888例を対象に症状消失およびLong COVIDについてフォローアップしたグローバル第III相試験(SCORPIO-HR試験)の結果について、ドイツ・ミュンヘンで開催された第25回国際エイズ学会(AIDS 2024)で発表された内容の一部についても言及された。本試験では、主要評価項目を、15の症状について症状が完全に消失し2日間以上経過したことと定義し、本剤とプラセボを比較した。本試験の結果、15症状消失までの時間短縮を示したが、統計学的な有意差は認められなかった(ゾコーバ群:12.5日vs.プラセボ群13.1日、p=0.14)。
アジア圏(日本、韓国、ベトナム)における第III相試験(SCORPIO-SR試験)では、5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳、熱っぽさまたは発熱、倦怠感[疲労感])について消失して1日以上経過したと定義し、本剤とプラセボを比較した。本試験の結果、ゾコーバ群:10.1日vs.プラセボ群10.9日、p=0.04となり、統計学的に有意な結果が示された。
SCORPIO-HR試験およびSCORPIO-SR試験において、同じ施設でPCRの測定をしたところ、本剤を服用することでプラセボよりも速やかにウイルス量を低下させ、症状を伴うウイルス力価のリバウンドはみられなかったという。
現在、本剤について、国内の小児を対象とした症例集積や、グローバルでの予防効果の試験、グローバルでの入院から早期復帰の試験(STRIVE試験)、国内でのLong COVIDに対する前向き試験なども進行中だ。
(ケアネット 古賀 公子)