認知症患者で頻繁にみられる認知症の行動・心理症状(BPSD)の治療において、第2世代抗精神病薬(SGA)がよく用いられるが、その相対的な有効性および忍容性は明らかになっていない。中国・四川大学のWenqi Lu氏らは、BPSDに対する5つのSGAの有効性、許容性、忍容性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。BMJ Mental Health誌2024年7月30日号の報告。
標準平均差(SMD)を用いて、連続アウトカムの固定効果をプールした。カテゴリ変数に対応したオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。有効性の定義は、標準化された尺度によるスコア改善とした。許容性は、すべての原因による脱落率とし、忍容性は、有害事象による中止率と定義した。相対的な治療順位は、SUCRAにより評価した。有害事象アウトカムには、死亡率、脳血管有害事象、転倒、過鎮静、錐体外路症状、排尿症状を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・ネットワークメタ解析には、介入期間が6~36週で5つのSGA(クエチアピン、オランザピン、リスペリドン、ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール)について検討を行ったランダム化比較試験20件、6,374例を含めた。
・有効性アウトカムは、プラセボと比較し、ブレクスピプラゾールのほうが高かった(OR:−1.77、95%CI:−2.80~−0.74)。また、ブレクスピプラゾールは、クエチアピン、オランザピン、アリピプラゾールよりも優れていた。
・許容性に関しては、アリピプラゾールのみがプラセボよりも良好であり(OR:0.72、95%CI:0.54~0.96)、アリピプラゾールはブレクスピプラゾールよりも優れていた(OR:0.61、95%CI:0.37~0.99)。
・忍容性に関しては、オランザピンはプラセボ(OR:6.02、95%CI:2.87~12.66)、リスペリドン(OR:3.67、95%CI:1.66~8.11)、クエチアピン(OR:3.71、95%CI:1.46~9.42)よりも不良であり、アリピプラゾールはオランザピンよりも優れていた(OR:0.25、95%CI:0.08~0.78)。
・クエチアピンは、脳血管有害事象について良好な安全性が示唆された。
・ブレクスピプラゾールは、転倒についてより安全性が高く、過鎮静についても同様の安全性が示唆された。
著者らは「ブレクスピプラゾールは、BPSD治療において優れた有効性を示し、アリピプラゾールは最も許容性が高く、オランザピンは最も忍容性が低いことが示された。本結果は、意思決定の指針として利用可能であると考えられる」とまとめている。
(鷹野 敦夫)