日本の日常的な食習慣が代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)および肝線維症に及ぼす影響を調査した横断研究の結果、野菜中心の食習慣がMASLD患者の肝線維化リスクの低減と関連していたことが、弘前大学の笹田 貴史氏らによって明らかになった。Nutrients誌2024年8月28日号掲載の報告。
MASLDの発症・進行には、食習慣が大きく関与している。これまで、日本食、地中海食、西洋食などの国民的食習慣とMASLDの関連について多くの研究がなされているが、国内の同一地域における食習慣の違いがMASLDの発症・進行にどの程度影響するかを疫学的に検討した研究は乏しい。そこで研究グループは、日本の日常的な食習慣がMASLDと肝線維症の予防に有効であるという仮説を立て、日本の農村地域の一般住民におけるMASLDの発症と肝線維症への進行に対する食習慣の影響を調査した。
対象は、青森県弘前市岩木地区の「岩木健康増進プロジェクト」に参加した20歳以上の成人であった。データは2018年5月26日~6月4日に収集された。合計1,056人(20~88歳)が本研究に参加した。脂肪性肝疾患の診断に影響を与える因子を有する参加者は除外された結果、解析には727人が含まれた。参加者は、毎日の食物摂取量に基づいて、米の摂取量が多いグループ(米摂取群)、野菜やキノコ類の摂取量が多いグループ(野菜摂取群)、魚介類の摂取量が多いグループ(魚介類摂取群)、洋菓子やアイスクリームの摂取量が多いグループ(甘味摂取群)に分類された。
主な結果は以下のとおり。
・220例がMASLDの診断基準を満たした。4つの食習慣群におけるMASLD患者の割合に有意差はなく、食習慣はMASLDの有意なリスク因子とは特定されなかった。
・MASLDと診断された参加者の94例(42.7%)に肝線維化が認められた。
・MASLD集団における単変量解析では、野菜摂取群は米摂取群よりも肝線維化が有意に少なかった(野菜摂取群vs.米摂取群のオッズ比[OR]:0.42、95%信頼区間[CI]:0.19~0.92、p=0.030)。米摂取群と魚介類摂取群および甘味摂取群の間に有意差は認められなかった。
・多変量解析では、肝線維症のリスク因子として、BMI≧(OR:1.83、95%CI:1.01〜3.32、p=0.047)およびインスリン抵抗性(HOMA-IR)≧(OR:3.18、95%CI:1.74〜5.80、p<0.001)が特定された一方で、野菜摂取群であることは有意な低リスク因子であった(OR:0.38、95%CI:0.16〜0.88、p=0.023)。
・肝線維化の抑制に関連する食品および栄養素を調査する多変量解析により、ニンジン、カボチャ、ダイコン、カブが重要な食品であることが判明した。これらの食品をさらに分析したところ、抗酸化作用を有するα-トコフェロールの高摂取が肝線維症の有意な低リスク因子であることが明らかになった(OR:0.74、95%CI:0.56〜0.99、p=0.039)。
研究グループは「これらの知見は、日本の野菜中心の食習慣がMASLD患者の肝線維化を抑制し、予後を改善する可能性を示唆するものである」とまとめた。
(ケアネット 森 幸子)