腫瘍循環器におけるダルテパリン、デクスラゾキサンの適応外使用/腫瘍循環器学会
がん関連の循環器合併症に臨床応用が望まれるダルテパリン、デクスラゾキサンの適応外使用について、また、アントラキノン心筋症に対する新たな予防薬について第7回日本腫瘍循環器学会学術集会で発表された。
同学会の保健委員会委員長であるJCHO星ヶ丘医療センターの保田知生氏は、ダルテパリン、デクスラゾキサンの申請活動状況を報告した。
がん関連静脈血栓塞栓症(CAVT)に対する第1選択薬は低分子ヘパリン(LMWH)である。2007年には、FDA(米国食品医薬品局)がLMWHの1つであるダルテパリンナトリウムにCAVTの再発抑制に対する効能・効果を追加承認している。
日本におけるダルテパリンの効能・効果は血液透析時の凝固防止と汎発性血管内血液凝固症(DIC)で、CAVTは保険適用ではない。日本腫瘍循環器学会は2020年3月、厚生労働省に適応外申請を行い、現在審議中である。ダルテパリンナトリウムのCAVT適応未承認は、グローバルでLMWHの次の治療薬として行われている直接経口抗凝固薬(DOAC)による予防の治験に日本が参加できないという影響も及ぼしているという。
鉄キレート剤であるデクスラゾキサンはアントラサイクリン系抗がん剤による心筋症発症抑制に唯一有用性が証明されている薬剤である。海外では、アントラサイクリン系抗がん剤の血管外漏出と共に心筋症予防でも承認されている。
一方、日本での効能・効果はアントラサイクリン系抗がん剤の血管外漏出であり、同剤による心筋症は保険適用ではない。日本腫瘍循環器学会は2021年5月、厚生労働省に適応外申請を行い、現在審議中である。一方、2023年2月にNHKがアントラサイクリン心筋症を取り上げた番組を報道し注目を浴びた。
デクスラゾキサンの申請活動が続く中、アントラサイクリン心筋症については、新たな可能性が示されている。九州大学病院の池田 昌隆氏は、アントラサイクリンによる心毒性抑制薬として、がんの診断で活用されている5-ALAの可能性を発表した。
池田氏は鉄の蓄積により心筋特異的に誘導される細胞死「フェロトーシス」がアントラサイクリン心筋症の原因の1つであることから、同症の予防標的としてフェロトーシスに注目。動物モデルでヘムの前駆体である5-ALAが、ドキソルビシンによる細胞死とLVEF低下抑制を示すことを明らかにした。現在、第I・II相試験を計画中だという。
(ケアネット 細田 雅之)
参考文献・参考サイトはこちら
関連記事
がん患者のVTE治療、アピキサバンは低分子ヘパリンに非劣性/NEJM
ジャーナル四天王(2020/04/22)
がん患者のVTE治療、エドキサバンはダルテパリンに非劣性/NEJM
ジャーナル四天王(2017/12/21)
[ 最新ニュース ]
医師の腺腫検出率改善が大腸がんリスク低下と関連/JAMA(2025/01/06)
急性呼吸不全、高流量経鼻酸素vs.非侵襲的人工換気/JAMA(2025/01/06)
GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドは、駆出率の保たれた心不全肥満患者に有効(解説:佐田政隆氏)(2025/01/06)
体脂肪率が片頭痛の重症度と関連、とくに女性で顕著(2025/01/06)
ワイン摂取量と尿中酒石酸・心血管リスクの関係/Eur Heart J(2025/01/06)
疾患の検出や発症予測、血液検査が一助に?(2025/01/06)
難治性進行膀胱がん、新たな治療法に期待(2025/01/06)
不規則な睡眠は肥満に関連する肝疾患の特徴?(2025/01/06)
1歳半までの受傷歴がある子どもは、ケガの再発リスクが高い―国内縦断研究(2025/01/06)
[ あわせて読みたい ]
トレンド・トーク『肺がん』(2024/06/11)
Dr.大塚の人生相談(2024/02/26)
災害対策まとめページ(2024/02/05)
IBD(炎症性腸疾患)特集(2023/09/01)
旬をグルメしながらCVIT誌のインパクトファクター獲得を祝福する【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第63回(2023/08/29)
エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11)
医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01)
アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11)
アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11)
診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17)