統合失調症患者に対する抗精神病薬治療は、死亡率の低下に寄与しているが、抗精神病薬の治療アドヒアランスが低いことは問題である。長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬を用いると、この問題を部分的に対処可能であると考えられるが、経口抗精神病薬と比較した全死亡率への影響は不明である。スペイン・バスルト大学のClaudia Aymerich氏らは、LAI抗精神病薬治療を行っている患者における全死亡率、自殺死亡率、非自殺死亡率について、経口抗精神病薬治療を行った場合との比較を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2024年8月22日号の報告。
経口抗精神病薬と比較したLAI抗精神病薬による治療を行っている患者における全死亡率、自殺死亡率、非自殺死亡率のオッズ比(OR)を分析するため、ランダム効果メタ解析を実施した。個々のLAI抗精神病薬およびプールされたLAI抗精神病薬とプールされた経口抗精神病薬との比較を行い、分析した。感度分析は、研究デザイン、設定、スポンサードについて実施した。性別、年齢、抗精神病薬投与量、人種について、メタ回帰分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・17件、1万2,042例(経口群:5,795例、LAI群:6,247例)を対象に含めた。
・LAI群は、経口群よりも、全死亡リスクが低かった(OR:0.79、95%CI:0.66~0.95)。
・LAIと経口抗精神病薬を比較した研究のみを対象とした場合、全死亡率(OR:0.79、95%CI:0.66~0.95、p<0.01)、非自殺死亡率(OR:0.77、95%CI:0.63~0.94、p=0.01)については、統計学的に有意な差が認められたが、自殺死亡率(OR:0.86、95%CI:0.59~1.26、p=0.44)については有意な差が認められなかった。
・LAI抗精神病薬による死亡率低下は、初回エピソード患者において、慢性期患者と比較し、より顕著であった(OR:0.79、95%CI:0.66~0.95)。
・個々のLAIにおいては、プールされたすべての経口抗精神病薬と比較し、統計学的に有意な差は認められなかった。
著者らは「LAI抗精神病薬は、経口抗精神病薬と比較し、統合失調症患者の全死亡率、非自殺死亡率の低下に寄与することが示唆された。この違いは、投薬や医療サービスに対するアドヒアランスが影響していると考えられる」とし、「可能な限り、初回エピソードからLAI抗精神病薬の使用を検討する必要がある」とまとめている。
(鷹野 敦夫)