人口の高齢化に伴い、統合失調症の罹患においても高齢者の有病率が増加しており、これまで以上に薬剤選択の重要性が増している。現在、高齢統合失調症患者に関するエビデンスが不足していることから、台湾・Far Eastern Memorial HospitalのJia-Ru Li氏らは、向精神薬の使用量および累積投与量が高齢統合失調症患者のすべての原因および原因別の死亡リスクに及ぼす影響を調査するため、コホート研究を実施した。Pharmaceuticals (Basel, Switzerland)誌2024年1月8日号の報告。
対象は、統合失調症と診断された高齢者6,433例。5年間のフォローアップ調査を実施した。抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、鎮痛薬/睡眠薬の用量(低用量群、中用量群、高用量群)に関連する死亡リスクを、各用量群と投与なし群とで比較を行った。各用量群におけるすべての原因による死亡率および特定の原因による死亡率を比較するため、Cox回帰を生存分析に用いた。特定の向精神薬の投与量を変数とし、それに応じて共変量を調整した。
主な結果は以下のとおり。
・抗精神病薬の低用量群および中用量群は、抗精神病薬を投与されていない群と比較し、生存率が高かった。
・抗精神病薬の中用量群は、心血管疾患による死亡リスクの低下が認められた。
・同様に、抗うつ薬の低用量群および中用量群は、生存率が高かった。
・鎮痛薬/睡眠薬では、低用量群で死亡リスクが低下していた。
著者らは「高齢統合失調症患者における抗精神病薬の低/中用量での使用は、すべての原因による死亡リスク低下と関連しており、適切な薬剤選択と抗精神病薬投与の重要性が示唆された。高齢統合失調症患者における治療の複雑さに対処するため、多剤併用の慎重な管理や患者ごとの薬物治療戦略が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)