抗PD-L1抗体デュルバルマブは、切除不能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線療法後の地固め療法、切除可能なStageII~IIIB期NSCLCの周術期治療において有効性が示されている1,2)。そこで、完全切除NSCLC患者の術後補助療法におけるデュルバルマブの有効性を検討することを目的として、国際共同第III相無作為化比較試験「BR.31試験」が実施された。本試験の結果、完全切除NSCLCの術後補助療法におけるデュルバルマブの有効性は示されなかった。本結果は、カナダ・オタワ大学のGlenwood Goss氏によって欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表された。
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験
・対象:完全切除(R0切除)を達成したStageIB(≧4cm)〜IIIA(AJCC第7版)のNSCLC患者1,415例
・試験群(デュルバルマブ群):デュルバルマブ(20mg/kgを4週ごと、最長1年) 944例
・対照群(プラセボ群):プラセボ(4週ごと、最長1年) 471例
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1 TC≧25%およびEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者における無病生存期間(DFS)
[主要な副次評価項目]PD-L1 TC≧1%およびEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者におけるDFS、OS、有害事象など
今回の発表では、EGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の集団の結果が報告された。本発表における主な結果は以下のとおり。
・EGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者の割合は86%であり、この集団における年齢中央値は64歳、男性の割合は65%、腺がんの割合は64%であった。
・追跡期間中央値60.0ヵ月時点において、主要評価項目のPD-L1 TC≧25%およびEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者におけるDFSは、デュルバルマブ群69.9ヵ月、プラセボ群60.2ヵ月であり(ハザード比[HR]:0.935、95%信頼区間[CI]:0.706~1.247)、主要評価項目は達成されなかった。
・PD-L1 TC≧1%およびEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者におけるDFSは、デュルバルマブ群59.9ヵ月、プラセボ群60.3ヵ月であった(HR:0.989、95%CI:0.788~1.248)。
・EGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性(PD-L1の発現状況は問わない)の患者におけるDFSは、デュルバルマブ群60.0ヵ月、プラセボ群53.9ヵ月であった(HR:0.893、95%CI:0.752~1.065)。
・Grade3/4の治療関連有害事象は、デュルバルマブ群の13.0%(122例)、プラセボ群の4.5%(21例)に発現した。
Goss氏は、本研究結果について「EGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の完全切除NSCLC患者において、術後補助療法としてデュルバルマブを用いる治療法は、PD-L1の発現状況にかかわらずDFSを改善しなかった。NSCLC患者において最適な効果を得るためには、周術期でのアプローチと同様に、原発巣の存在と関連する腫瘍抗原の存在が必要であることが示唆された」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)