未治療の切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、術前化学療法+周術期(術前術後)のデュルバルマブは、術前化学療法単独と比較し、無イベント生存期間(EFS)および病理学的完全奏効(pCR)を有意に改善し、安全性プロファイルは各薬剤の既知のプロファイルと一致していたことが示された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymach氏らが、28ヵ国で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「AEGEAN試験」の結果を報告した。術前または術後の補助療法としての免疫療法は、切除可能NSCLC患者のアウトカムを改善する可能性が示されており、周術期レジメンは両方の利点が組み合わさり長期アウトカムを改善することが期待されていた。NEJM誌2023年10月23日号掲載の報告。
術前化学療法+周術期デュルバルマブvs.術前化学療法+プラセボを比較
研究グループは、未治療の切除可能なStageIIA~IIIB[N2](AJCC Cancer Staging Manual第8版による)のNSCLCで、手術が予定され、ECOG PSが0~1の18歳以上の患者を、病期(IIまたはIII)、PD-L1発現(≧1%または<1%)で層別化して、デュルバルマブ群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。術前にプラチナ製剤ベースの化学療法+デュルバルマブまたはプラセボの静脈内投与を3週ごとに4サイクル、術後にデュルバルマブまたはプラセボの静脈内投与を4週ごとに12サイクル行った。
主要評価項目は、EFS(盲検下独立中央判定)とpCR(中央評価)であった。EFSは、手術の施行または完了が阻害された病勢進行、局所再発または遠隔再発、あるいは全死因死亡のうち最も早く発生したイベントまでの期間と定義した。なお、有効性の解析は、ベースラインで
EGFRまたは
ALK遺伝子変異が確認された患者を除外して行われた(修正ITT集団)。
2019年1月2日~2022年4月19日の間に、計802例がデュルバルマブ群(400例)とプラセボ群(402例)に無作為に割り付けられ、修正ITT集団は計740例(それぞれ366例、374例)であった。
デュルバルマブ併用の有益性、病期やPD-L1発現状況にかかわらず確認
修正ITT集団について事前に計画した第1回中間解析(データカットオフ2022年11月10日、無イベント生存者の追跡期間中央値11.7ヵ月[範囲:0.0~46.1])において、EFSは、デュルバルマブ群未到達(NE)、プラセボ群25.9ヵ月であり、デュルバルマブ群で有意な延長を認めた(病勢進行、再発または死亡の層別化ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.53~0.88、p=0.004)。12ヵ月EFS率は、デュルバルマブ群73.4%(95%CI:67.9~78.1)、プラセボ群64.5%(58.8~69.6)であった。24ヵ月EFS率は、それぞれ63.3%(56.1~69.6)、52.4%(45.4~59.0)であった。
pCRは最終解析(データカットオフ2022年11月10日)において、デュルバルマブ群17.2%(95%CI:13.5~21.5)、プラセボ群4.3%(95%CI:2.5~6.9)で、デュルバルマブ群が有意に高かった(群間差:13.0ポイント、95%CI:8.7~17.6)。この結果は、中間解析の結果(データカットオフ2022年1月14日、402例対象、p<0.001)と一致していた。
EFSおよびpCRに関するデュルバルマブの有益性は、病期およびPD-L1発現状況にかかわらず確認された。
Grade3または4の有害事象の発現率は、デュルバルマブ群42.4%、プラセボ群43.2%であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)