術前または術後補助化学療法を受けた閉経前のHR+/HER2+の早期乳がん患者において、内分泌療法に卵巣機能抑制を追加することで予後が有意に改善したことを、韓国・延世大学校医科大のSung Gwe Ahn氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。
これまでの研究により、卵巣機能抑制と内分泌療法の併用により、閉経前のHR+の早期乳がん患者の無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)が改善することが示されている。しかし、これらの対象の多くはHER2-の乳がん患者であり、HER2+の乳がん患者におけるデータは限られている。
そこで研究グループは、国際共同第III相HERA試験のデータを後ろ向きに解析し、HR+/HER2+の閉経前の早期乳がん患者に卵巣機能抑制を追加することで予後が改善するかどうかを評価した。また、卵巣機能抑制に併用した内分泌療法(タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬)による予後を比較した。
患者を、下記の4群に分け、(1)のタモキシフェン単独群vs.(2~4)の内分泌療法+卵巣機能抑制群、および(2)のタモキシフェン併用群vs.(3、4)のアロマターゼ阻害薬併用群のDFSとOSを評価した。追跡期間中央値は11.0年であった。
(1)タモキシフェン単独 501例
(2)タモキシフェン+卵巣機能抑制 269例
(3)タモキシフェン+アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制 140例
(4)アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制 55例
主な結果は以下のとおり。
タモキシフェン単独vs.内分泌療法+卵巣機能抑制
・解析には965例が含まれ、そのうち501例(51.9%)はタモキシフェン単独で、464例(48.1%)は卵巣機能抑制と内分泌療法(タモキシフェン269例[27.9%]、エキセメスタン195例[20.2%])を併用していた。
・内分泌療法+卵巣機能抑制群の10年DFS率は70.9%、タモキシフェン単独群は59.6%で、内分泌療法の追加は予後の改善と独立して関連していた(ハザード比[HR]:0.68[95%信頼区間[CI]:0.53~0.88]、p<0.001)。
・10年OS率は、内分泌療法+卵巣機能抑制群84.7%、タモキシフェン単独群74.0%で、併用群で有意に良好であった(HR:0.64[95%CI:0.46~0.89]、p<0.001)。
・これらの結果は、トラスツズマブ併用の有無によらず同様の傾向にあった。
タモキシフェンvs.アロマターゼ阻害薬
・解析には、タモキシフェン+卵巣機能抑制群269例、タモキシフェン+アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群とアロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群(以下、アロマターゼ阻害薬+免疫機能抑制群)195例が含まれた。
・10年DFS率は、アロマターゼ阻害薬+免疫機能抑制群が78.7%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群が65.2%であり、アロマターゼ阻害薬併用のほうが良好であった(HR:0.54[95%CI:0.38~0.75])。
・10年OS率は、アロマターゼ阻害薬+免疫機能抑制群91.3%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群79.7%であった(HR:0.48[95%CI:0.30~0.77])。
・これらの結果は、トラスツズマブ併用の有無によらず同様の傾向にあった。
(ケアネット 森)