卵巣機能抑制療法を受けているエストロゲン受容体(ER)陽性の閉経前早期乳がん患者における、アロマターゼ阻害薬とタモキシフェンの有効性について、Early Breast Cancer Trialists’Collaborative group(EBCTCG)が4つの無作為化試験のメタ解析により比較した。Lancet Oncology誌オンライン版2022年2月3日号に掲載の報告より。
LH-RHアゴニスト(ゴセレリンまたはトリプトレリン)または卵巣摘出術を受けている閉経前のER陽性乳がん患者を対象に、アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、エキセメスタン、またはレトロゾール)とタモキシフェンを3~5年間比較した無作為化試験の患者データを用いてメタ解析を行った。ベースライン特性、乳がんの再発または二次原発がん発生の日付と部位、および死亡の日付と原因に関するデータが収集された。
主要評価項目は、乳がんの再発率(遠隔、局所、または対側)、乳がんによる死亡、再発のない死亡、および全死因死亡とされた。標準的なITTログランク解析により、初回イベントのリスク比(RR)とその信頼区間を推定した。
主な結果は以下のとおり。
・1999年6月17日~2015年8月4日までに登録されたER陽性の乳がん患者7,030例を含む、4つの試験(ABCSG XII、SOFT、TEXT、およびHOBOE試験)からデータを取得した。
・追跡期間中央値は8.0年(IQR:6.1~9.3)。
・乳がん再発率は、アロマターゼ阻害薬群でタモキシフェン群よりも低かった(RR:0.79、95%信頼区間[CI]:0.69~0.90、p=0.0005)。
・アロマターゼ阻害薬による再発に対するベネフィットは、治療法が異なる0~4年目にみられ(RR:0.68、99%CI:0.55~0.85、p<0.0001)、5年再発リスクの絶対値が3.2%(95%CI:1.8~4.5)低下した(アロマターゼ阻害薬群6.9% vs.タモキシフェン群10.1%)。
・5~9年目(RR:0.98、99%CI:0.73~1.33、p=0.89)および10年目以降では、さらなるベネフィットなし、およびベネフィットなしであった。
・遠隔転移の再発率はアロマターゼ阻害薬群で低かった(RR:0.83、95%CI:0.71~0.97、p=0.018)。
・乳がんによる死亡(RR:1.01、95%CI:0.82~1.24、p=0.94)、再発のない死亡(RR:1.30、95%CI:0.75~2-25、p=0.34)、全死因死亡(RR:1.04、5%CI:0.86~1.27、p=0.68)に治療間の有意差は認められなかった。
・アロマターゼ阻害薬群でタモキシフェン群よりも骨折が多かった(6.4% vs. 5.1%、RR:1.27、95%CI:1.04~1.54、p=0.017)。
・乳がん以外の死亡(0.9% vs. 0.7%、RR:1.30、95%CI:0.75~2.25、p=0.36)と子宮内膜がん(0.2% vs. 0.3%、RR:0.52、95%CI:0.22~1.23、p=0.14)はまれであった。
著者らは、卵巣機能抑制療法を受けている閉経前の早期乳がん患者においては、タモキシフェンよりもアロマターゼ阻害薬の使用で、乳がんの再発リスクが低下することが示唆されたが、死亡率への影響を評価するには、より長いフォローアップが必要と考察している。
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(ケアネット 遊佐 なつみ)