転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)に対して、ダロルタミド+アンドロゲン遮断療法(ADT)の併用療法が、プラセボ+ADTと比較して画像上の無増悪生存期間(rPFS)の有意な改善を示した。カナダ・モントリオール大学のFred Saad氏が、国際共同第III相ARANOTE試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。同患者に対しては、第III相ARASENS試験において、ダロルタミドをADT+ドセタキセルに加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して全生存期間(OS)を有意に改善している。
・対象: mHSPC患者(ECOG PS 0~2)
・試験群(ダロルタミド+ADT群):ダロルタミド(1日2回、600mg)+ADT 446例
・対照群(プラセボ+ADT群):プラセボ+ADT 223例
・評価項目:
[主要評価項目]中央判定によるrPFS
[副次評価項目]OS、次の抗がん剤治療開始までの期間、mCRPCまでの期間、前立腺特異抗原(PSA)増悪までの期間、PSA不検出率(<0.2ng/mL)、疼痛増悪までの期間(BPI-SF)、安全性
・層別化因子:内臓転移、局所療法の有無
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン特性は両群でおおむね一致しており、年齢中央値はともに70歳、アジア人がダロルタミド+ADT群32.3% vs.プラセボ+ADT群29.1%、PSA中央値が21.4ng/mL vs. 21.2ng/mL、初回診断時に転移あり(de novo)が71.1% vs.75.3%、CHAARTED試験の高腫瘍量に該当したのが70.6% vs.70.4%、内臓転移ありが11.9% vs.12.1%、局所療法歴ありがともに17.9%であった。
・2024年6月7日のデータカットオフ時点におけるrPFS中央値は、ダロルタミド+ADT群未到達 vs.プラセボ+ADT群25.0ヵ月(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.41~0.71、p<0.0001)であった。
・rPFSのサブグループ解析の結果、すべてのサブグループでダロルタミド+ADT群における一貫したベネフィットがみられた。
・副次評価項目についても、すべての項目でダロルタミド+ADT群で優位な傾向がみられ、層別HRはOSが0.81(95%CI:0.59~1.12)、次の抗がん剤治療開始までの期間が0.40(0.29~0.56)、mCRPCまでの期間が0.40(0.32~0.51)、PSA増悪までの期間が0.31(0.23~0.41)、疼痛増悪までの期間が0.72(0.54~0.96)であった(OSのデータは未成熟)。
・治療中に発現した有害事象(TEAE)の発生状況は同様であり、Grade3/4はダロルタミド+ADT群30.8% vs.プラセボ+ADT群30.3%、Grade5は4.7% vs.5.4%で発生した。
・治療期間中央値はダロルタミド+ADT群24.2ヵ月 vs.プラセボ+ADT群17.3ヵ月であった。試験薬の中止につながるTEAEは、6.1% vs.9.0%で発生した。
Saad氏は、ドセタキセルを使用しないダロルタミド+ADT併用療法が、mHSPC患者の治療選択肢の1つとなるだろうと結論付けている。ディスカッサントを務めたオランダ・Radboud University Medical CenterのNiven Mehra氏は、本試験の対象とならなかった機能的に脆弱な集団における有効性についてのデータも求められるとし、ドセタキセルやアビラテロン、エンザルタミドに適応のなかった集団における本療法の有効性を評価する、進行中のPEACE-6試験の結果に注目したいとコメントした。
(ケアネット 遊佐 なつみ)