EGFR exon19挿入変異NSCLCへのEGFR-TKI、第1~3世代の効果は?/WCLC2024

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/09/30

 

 EGFR遺伝子exon19挿入変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、第2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)が有効であることが示唆された。EGFR-TKIの登場により、主要なEGFR遺伝子変異(exon21 L858R、exon19欠失変異)を有するNSCLC患者の予後は改善している。しかし、uncommon変異を有するNSCLC患者に対するEGFR-TKIの有効性はさまざまであり、希少変異であるexon19挿入変異に対する有効性は明らかになっていなかった。そこで、上原 悠治氏、泉 大樹氏(国立がん研究センター東病院 呼吸器内科)らの研究グループは、遺伝子スクリーニングプロジェクト「LC-SCRUM-Asia」において、NSCLC患者のEGFR遺伝子exon19挿入変異の発現割合およびEGFR-TKIの有効性を検討した。本研究結果は、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)において発表された。

 研究グループは、遺伝子スクリーニングプロジェクト「LC-SCRUM-Asia」の対象となったNSCLC患者1万6,204例について、次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析によりEGFR遺伝子exon19挿入変異を有する割合を調べた。また、EGFR遺伝子exon19挿入変異を有するNSCLC患者の共変異の割合も検討した。さらに、EGFR遺伝子exon19挿入変異(K745_E746insIPVAIK)またはexon19欠失変異(E746_A750)を導入したEGFR分子を発現するBa/F3細胞モデルを用いて、EGFR-TKIへの感受性を検討した。また、AlphaFoldとOpenFoldを用いた立体構造予測により、EGFR exon19挿入変異体とEGFR-TKIとの結合状態を予測した。最後に、EGFR遺伝子exon19挿入変異を有するNSCLC患者における第1~3世代EGFR-TKIの臨床的有効性を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析が可能であった1万5,226例中3,269例(21%)にEGFR遺伝子変異が認められ、そのうちexon19挿入変異が認められた患者は13例であった(0.1%)。EGFR遺伝子exon19挿入変異の内訳は、K745_E746insIPVAIKが12例、 K745_E746insVPVAIKが1例であった。
・主要なEGFR遺伝子変異を有するNSCLC患者とEGFR遺伝子exon19挿入変異を有するNSCLC患者の背景には違いがみられなかった。
EGFR遺伝子exon19挿入変異を有するNSCLC患者における主な共変異は、TP53遺伝子変異(62%)、EGFR遺伝子増幅(15%)、CDKN2B遺伝子増幅(8%)、PIK3CA遺伝子変異(8%)、FGFR遺伝子変異(8%)であった。
・Ba/F3細胞モデルを用いた解析では、EGFR遺伝子exon19挿入変異(K745_E746insIPVAIK)を導入したEGFR分子を発現する細胞株のEGFR-TKIに対する感受性は、第2世代EGFR-TKIが最も高かった(IC50の範囲:0.57~0.95pM)。第1世代EGFR-TKI、第3世代EGFR-TKI、EGFR exon20挿入変異体への活性を示すEGFR-TKIのIC50は、それぞれ61~158nM、13.8nM、1.78~21.3nMであった。
・立体構造予測においても、第2世代EGFR-TKIのアファチニブがEGFR exon19挿入変異体のcavityに入り込み、結合すると予測された。
EGFR遺伝子exon19挿入変異を有するNSCLC患者13例中12例がEGFR-TKIによる治療を受けた。無増悪生存期間(PFS)中央値は7.2ヵ月(95%信頼区間:6.0~推定不能)、全生存期間(OS)中央値は20.1ヵ月(同:16.3~推定不能)であった。
・細胞株と立体構造予測の知見に基づいて、EGFR-TKIの世代別に抗腫瘍効果を比較したところ、第2世代EGFR-TKIが最も高い奏効割合を示した。

【PFS中央値】
 第1世代(2例):8.7ヵ月
 第2世代(5例):14.7ヵ月
 第3世代(5例):4.4ヵ月

【OS中央値】
 第1世代(2例):25.5ヵ月
 第2世代(5例):未到達
 第3世代(5例):15.9ヵ月

【奏効】
 第1世代(2例):PR 1例、SD 1例
 第2世代(5例):PR 4例、SD 1例
 第3世代(5例):SD 3例、PD 2例

 以上の結果について、研究グループは「細胞株、立体構造予測、大規模臨床データベースのすべての結果が一致し、EGFR遺伝子exon19挿入変異を有するNSCLC患者に対して、第2世代EGFR-TKIが最も有効であることが示唆された」とまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)

参考文献・参考サイトはこちら