KRAS G12C陽性肺がんの大規模な臨床ゲノムプロファイル:LC-SCRUM-Asia研究より/Lung Cancer

提供元:ケアネット

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公開日:2023/01/25

 

 ターゲット治療薬の開発で、肺がん領域でも注目されているKRAS G12C変異。2022年末、アジア人KRAS G12C陽性非小細胞肺がん(NSCLC)のリアルワールド解析が発表された。

 KRAS G12Cは、白色人種のNSCLCでは約14%に発現するとの報告があるが、アジア人ではどの程度なのか。また、同集団に対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性が報告されているが、アジア人患者でも効果は示されるのか。さらに、G12C以外の臨床ゲノム特性はどのようなものか。国立がん研究センター東病院・名古屋大学の田宮 裕太郎氏らは、肺がんの大規模前向きゲノムスクリーニングプロジェクト(LC-SCRUM-Asia)のデータベースに基づき、KRAS G12C NSCLCの臨床ゲノム特性とICIの治療成績を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・2015年3月〜2021年3月にLC-SCRUM-Asiaに登録されたNSCLC1万23例のうち、KRAS変異は14%(1,258例)に認められた。
KRAS変異の内訳は、G12Cが4.0%(376例)、G12Dが3.1%(289例)、G12Vは2.7%(251例)であった。
KRAS G12C陽性は、非G12C変異患者に比べ、男性および喫煙者の割合が高く(男性、喫煙者とも:p<0.001)、腫瘍変異負荷(TMB)が高い症例、PD-L1≧50%の症例が多かった(TMB:p<0.001、PD-L1:p=0.08)。
KRAS G12C陽性患者の全生存期間中央値は24.6ヵ月で、他の変異サブタイプとの差はなかった(G12V:18.2ヵ月、p=0.23、G12D:20.6ヵ月、p=0.65、その他のKRAS変異:18.3ヵ月、p=0.20)。
・ICI治療による無増悪生存期間中央値は、KRAS G12Cでは3.4ヵ月で、G12V陽性の4.2ヵ月(p=0.90)と同様だったが、G12Dの2.0ヵ月(p=0.02)と、その他のKRAS変異の2.5ヵ月(p=0.02)に比べ、有意に長かった。

 アジア人のNSCLCにおけるKRAS G12Cの頻度は、白人に比べて低かった。また、KRAS G12C NSCLCでは、高TMBやPD-L1高値など、免疫原性が亢進しており、ICIの感受性が高い可能性が示されている。

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(ケアネット 細田 雅之)