妄想性思考は、精神神経症状の1つであり、アルツハイマー病の長期的な進行において頻繁にみられ、うつ病や興奮など他の精神神経症状と併発する。妄想性思考には、さまざまなタイプがあり、それぞれの妄想性思考と抑うつ症状の併発については、あまりよくわかっていない。東京慈恵会医科大学の永田 智行氏らは、アルツハイマー病における妄想性思考と抑うつ症状の併発パターンの仮説的メカニズムを検証するため、横断的研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌2024年号の報告。
アルツハイマー病患者421例を対象に、アルツハイマー病に対する臨床的抗精神病薬治療介入効果試験のデータを分析し、年齢、性別、人種、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア、Neuropsychiatric Inventory(NPI)うつ病スコアを妄想性思考サブタイプの有無で比較した。妄想性思考には、被害妄想、物盗られ妄想、嫉妬妄想、見捨てられ妄想、幻の同居人妄想、カプグラ症候群、場所誤認妄想、テレビサイン妄想を含めた。次に、MMSEスコア15ポイント未満または15ポイント以上で層別化し、一次分析で有意差が認められた妄想性思考と抑うつ症状との関連性をさらに調査した。
主な結果は以下のとおり。
・8つの妄想性思考のサブタイプのうち、被害妄想とカプグラ症候群は、うつ病スコアが高かった。
・カプグラ症候群は、抑うつ症状に加え、全体的に認知機能低下の状態がより重度である可能性が示唆された。
著者らは「異なる妄想性思考における病因の違いを考慮し、アルツハイマー病患者に対する治療戦略の選択に役立てることが重要である」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)