アルツハイマー病(AD)は、記憶障害、認知機能障害、神経精神症状などを引き起こす神経変性疾患である。ADの神経精神症状のマネジメントでは、第2世代抗精神病薬(SGA)が頻繁に使用されるが、AD患者に対するSGAの安全性プロファイルについては、詳しく調査する必要がある。中国・福建医科大学のJianxing Zhou氏らは、米国FDAの有害事象報告システム(FAERS)のデータベースより、薬物有害反応(ADR)を分析し、AD患者におけるSGAの安全性を評価した。The Annals of Pharmacotherapy誌オンライン版2024年8月20日号の報告。
2014~23年のFAERSデータを包括的に分析し、リスペリドン、クエチアピン、オランザピン、クロザピン、アリピプラゾールなどのSGAで治療されたAD患者のADRに焦点を当て評価を行った。Bayesian confidence propagation neural network(BCPNN)、ワイブル分析、PBPKモデルを用いて、記述的、不均衡性、時間、用量について分析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・SGAで治療を行ったAD患者1,289例において、最も一般的に報告されたADRは、神経系、胃腸系、心臓系の有害事象であった。
・不均衡性分析では、心臓系、腎臓系、血管系において、有意な陽性シグナルが特定された。
・クエチアピン、リスペリドン、オランザピンは、クロザピン、アリピプラゾールと比較し、陽性シグナルがより多かった。
・時間分析では、心血管系ADRはランダムに発現するのに対し、腎臓系ADRは長期使用において増加することが示唆された。
・用量分析では、SGAの少量投与は、心臓系、腎臓系、血管系の複数のADRリスクに影響を及ぼさないことが示唆された。
著者らは「AD患者に対しSGAを使用する際には、とくに心臓系、腎臓系のADRをモニタリングすることの重要性が示唆された。安全かつ合理的な薬物治療をサポートするためにも、より包括的な臨床データを組み込んだ研究が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)