歯の数は日本人の平均余命にどの程度影響するか?

提供元:ケアネット

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公開日:2024/10/14

 

 これまでの研究において、歯の喪失が認知症リスクの増加と関連していることが報告されている。しかし、歯の数と認知症のない平均余命や認知症の有無によらない平均余命との関連を調査した研究は、これまでほとんどなかった。東北大学の木内 桜氏らは、日本人高齢者の歯の数と認知症のない平均余命や認知症の有無によらない平均余命との関連を調査するため、プロスペクティブコホート研究を実施した。Journal of the American Medical Directors Association誌2024年11月号の報告。

 2010〜20年の10年間フォローアップ調査を行った。対象は、日本の9つの自治体に在住する、機能的に自立した65歳以上の高齢者。歯の数は、20本以上、10〜19本、1〜9本、0本に分類した。アウトカムとして、10年間のフォローアップ期間中における認知症の発症および死亡率を収集した。歯の数に応じ、認知症のない平均余命や認知症の有無によらない平均余命を推定するため、multistate modelingを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・対象は、4万4,083人(男性の割合:46.8%)。
・平均年齢は73.7±6.0歳。
・フォローアップ期間中に、認知症を発症した割合は17.3%、死亡率は21.4%であった。
・歯の数が少ないことは、20本以上の歯を持つ場合と比較し、認知症リスク増加と関連していた。
【10〜19本】ハザード比(HR):1.14、95%信頼区間(CI):1.07〜1.22
【1〜9本】HR:1.15、95%CI:1.08〜1.22
【0本】HR:1.13、95%CI:1.05〜1.21
・歯の数が少ないことは、20本以上の歯を持つ場合と比較し、死亡率増加とも関連が認められた。
【10〜19本】HR:1.13、95%CI:1.05〜1.22
【1〜9本】HR:1.27、95%CI:1.19〜1.37
【0本】HR:1.47、95%CI:1.36〜1.59
・65歳時点での認知症のない平均余命は、歯が20本以上の人のほうが、0本の人と比較し、長かった。
【男性】20本以上:16.43年、0本:14.40年
【女性】20本以上:18.88年、0本:17.12年
・65歳時点での認知症の有無に関わらない平均余命においても、同様であった。
【男性】20本以上:17.84年、0本:15.42年
【女性】20本以上:22.03年、0本:19.79年

 著者らは「歯の数が多いと、認知症のない平均余命および認知症の有無に関わらない平均余命が長くなることが示唆された」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)